『Nのために』『告白』湊かなえの小説が映像化されやすい理由 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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『Nのために』『告白』湊かなえの小説が映像化されやすい理由

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週刊朝日#ドラマ

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、湊かなえ原作の映像作品が面白い理由をこう語る。

*  *  *
『Nのために』は、TBS系で金曜夜10時から放送されているミステリードラマだ。

 2004年。高級タワーマンションで、セレブ夫婦の殺人事件が起こる。殺されたのは、野口貴弘(徳井義実)とその妻、奈央子(小西真奈美)。現場に居合わせたのは、二人と交流のあった杉下希美(榮倉奈々)と安藤望(賀来賢人)、希美と安藤と同じアパート・野バラ荘の住人で奈央子と不倫関係にあった西崎真人(小出恵介)。そして、希美と同郷の青年・成瀬慎司(窪田正孝)。

 事件にかかわる登場人物6人全員の苗字か名前のイニシャルがNとなっており、『Nのために』のNとは誰のことなのか? というのが、最大の謎となっている。

 原作は湊かなえのミステリー小説。湊かなえは殺伐とした事件を群像劇形式で描くことを得意とする人気小説家だ。中島哲也が監督した映画『告白』を筆頭に、多くの作品が映画化され、ドラマの原作となっている。

 湊の小説が映像化されやすいのは、描写がシナリオのプロットのようだからだろう。

 湊の作品は、一章ごとに登場人物の視点を変えて、一人称を羅列することで物語を進める構成が多い。物語が進むにつれて、登場人物の証言が食い違ったり、時間が過去と現在を複雑に行き来することで、読者は迷宮に迷いこんだような感覚に巻き込まれていく。

 しかし、この形式は2時間弱の映画ではうまくハマるが、毎週放送される連続ドラマでは、物語が複雑になりすぎるため、見せ方が難しい。

 実際、本作と同じスタッフの手で作られた『夜行観覧車』(TBS系)は、時系列が入り組みすぎて、あまりうまくいってなかった。

 その失敗を踏まえてか、『Nのために』は、原作で断片的に配置されたパズル的なエピソードを時系列順に整理し、杉下希美を中心とした青春ドラマとして再構成されている。

 物語は、希美が幼少期をすごした香川県の青景島からはじまる。

 島で幸せに暮らしていた希美だったが、父が愛人と暮らしはじめたことをきっかけに、弟と母の早苗(山本未來)の3人での貧乏暮らしを強いられることになる。捨てられたショックで母は精神が錯乱し、買い物依存症となり希美を苦しめる。

 早苗のエキセントリックな性格は、湊かなえらしい毒のあるキャラクターで、彼女に苦しめられる希美の見世物小屋的な迫力が、序盤の見どころとなっていた。しかし、不幸のどん底でも、どこか甘酸っぱい青春物語として楽しめたのは、希美と成瀬の間にあるほのかな恋愛感情と、海をバックにした島のロケーションの美しさがあるからだろう。

 無機質で殺伐とした湊かなえワールドに対し、ドラマ版は抒情的な肉付けを加えて、うまい導入部を作ることに成功した。

 ミステリー小説をドラマ化するにあたって、青春群像劇の要素を前面に打ち出すという大胆な脚色は、東野圭吾の小説をドラマ化した『白夜行』(TBS系)からはじまったものだが、トリックや物語の面白さが保証されているからこそ、安心して人物描写に集中できるのだ。

 高校生時代からはじまり、大人へと成長していく15年間の月日を演じる榮倉奈々と窪田正孝の演技も情感あふれるものとなっていて、年齢に応じて、うまく演じ分けている。

 小説とドラマ、それぞれの長所がうまく噛み合った良作である。

週刊朝日  2014年12月26日号


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