芸能界でもおしどり夫婦として知られる陣内孝則・恵理子夫婦。付き合い始めた頃は妻の恵理子さんの方が稼いでいたと話す陣内孝則さん。だが、陣内孝則さんが出演していた、倉本聰さん脚本の『ライスカレー』の回が進むごとに、夫の人気が急上昇。あまり隠れて付き合っていなかったという二人は、写真週刊誌に撮られてしまった。

妻「記事が出る前に彼が福岡の実家に電話したんです。そしたら、『恵理子さんっていう人は身長何センチ?』って聞かれたと。『171センチ』って答えたら、『じゃあタンスは担げるな』って」

 夫の実家は婚礼家具を作る木工所。嫁の条件は「タンスを担げるかどうか」だった。

妻「お嫁さんは本当に、代々タンスを担ぐらしいんです」

夫「福岡の大川というところは女性が働く町なんですよ」

妻「初めて陣内家に行ったときは、『ドラマの寺内貫太郎一家みたいな家だなあ!』って思いました」

夫「この人は東京のサラリーマンの核家族で育っていて、僕は田舎の大家族。しかも職人の家だから」

妻「リビングは完全にパブリックスペース。いろんな人がチャイムも鳴らさずに自由に入ってくるから、油断もスキもないっていうか」

夫「彼女が鏡台の前で化粧していたら、スーッとおばさんの顔が入ってきて、『あ、そげん化粧は濃くなかばいね』って言われたって(笑)」

 異文化のギャップに驚きながらも、出会った翌87年に結婚。決め手はなんだったのだろう?

夫「僕、マザコンなんすかね。丈夫そうな女の人に惹かれるんですよ。お袋がそうだったんです。うちの親父はすごく小柄で、お袋は大柄。ノミの夫婦なんです。常に親父には、『でかい女と結婚しろ』ってささやかれてた」

妻「陣内家のお嫁さんって、みんなそんな感じだよね」

夫「それに彼女は明るくてポジティブシンキング。僕は意外とナイーブでネガティブなところがある。性格が正反対なんです。だから相性はよかったのかなと。あと結婚は、“はずみ”が大きいね」

妻「確かに」

夫「週刊誌に出たあと、倉本聰先生に『お前、絵梨ちゃんと結婚する気あるのか?』って、何十人もいる前で聞かれたんです。あの状況で『いま、ちょっと遊んでるだけです』なんて言えませんよねえ?(笑)。『はい、あります』って言ったら、倉本先生が『よし、俺が仲人してやる』って」

妻「まあ彼は真面目なんです。不器用というか。今でもですけど。だって売れない時期が長かった人が、やっと売れ出したときでしょう? これからウハウハにモテるかもしれないし、もうちょっと遊びたいっていう男性だっていると思うんです。でも彼は、『僕も結婚したいと思ってます』とあっさり言った」

夫「いまになってみれば、もうちょっと世間を知ったほうがよかったかなと……」

妻「アハハハ」

夫「僕のDNAのなかに、早く結婚して添い遂げなきゃ、っていうのがあるんでしょうね。婚礼家具って、本当に傷一つあっちゃいけないんですよ、縁起物だから。だから陣内家では子どものころから、『頼むから離婚だけはしてくれるな』と刷り込まれるんです」

(聞き手・中村千晶)

週刊朝日  2014年12月19日号より抜粋