辺野古移設に続き、衆院解散。安倍政権の動きに作家の室井佑月氏は怒りをあらわにする。

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 沖縄県知事選は辺野古移設反対を掲げた翁長雄志さんが勝った。圧勝だ。

 自民は勝ったら、南北縦貫鉄道の建設、国際医療拠点構想、カジノを含む統合型リゾート開発、あげくにユニバーサル・スタジオ・ジャパンの誘致までするといいだしておったが、沖縄のみなさんは、絵に描いたモチ、いってみれば汚い取引に負けなかったのね。

 沖縄に米軍基地を押し付けるのは、不当な差別だもん。人は不当な差別を受けたら、怒るのが正しい。人としてのプライドを、目先のカネで売らなかった沖縄県民は立派だ。

 選挙のあった夜は、自分もそうあるべき、と強く思い、酒(あらかじめ買っておいた沖縄の泡盛)を飲んで良い気分で寝た。

 けど、その良い気分はすぐに崩される。翌日、17日の朝の会見で、菅官房長官は、「辺野古移設は粛々と進める」と語った。

 辺野古移設反対派が勝ったというのに。「移設を断念した」になれと思うが、きゅうにそう決められないのであれば、「再考する」というべきだ。それが「粛々と進める」だって。

 あたしはこれは、沖縄県民に対する差別だと思う。日本は国民主権の国。国民こそが政治の主役である国だ。沖縄県民の意思なんて関係ないというのは、沖縄県民は日本国民じゃないといっているに等しい。もう沖縄県で自民党が勝つことはないかもしれない。ここまで馬鹿にされて、あたしだったら絶対に票を入れないね。

 そういえば、18日に安倍さんが会見で衆議院の解散を表明したのだけれど、こっちもあたしは腹が立ったな。来年の10月に予定された消費税10%への引き上げを18カ月延期する、そのことについて国民に信を問いたい、だってさ。

 消費税増税は、7割もの国民も、多くの野党も反対している。賛成していないのに、信を問うっておかしくないか? 信を問わなきゃいけないのは、秘密保護法のことだったり、集団的自衛権の行使容認のことだったり、原子力エネルギーをどうするかだったりしないの?

 つーか、安倍さんは会見で霞が関の方々を慮(おもんばか)ってか、「消費税率引き上げの再延期はしない」、そうきっぱりいったよ。なら「消費税をかならず上げることについて、国民に信を問う」というのが正しいんじゃないの?

 だいたい安倍さんが自慢したアベノミクスの成果、「雇用者数は100万人以上増えた」「この春、給料は平均2%以上アップした」ってのも?なんだよ。非正規雇用が増大して、物価の上昇にともない実質賃金は減少しつづけているんだから。

 安倍さんはアベノミクス批判をしている人と徹底討論したいといっていた。それだけはほんとうにやってほしい。どうして今までしなかったの? あなたがやりたいといえば、いくらでも出来たでしょうに。

週刊朝日  2014年12月12日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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