田原総一朗「小渕経産相辞任で火がついた『政治とカネ』国会への違和感」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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田原総一朗「小渕経産相辞任で火がついた『政治とカネ』国会への違和感」

連載「ギロン堂」

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 相次ぐ閣僚の失態に苦しむ安倍政権。「政治とカネ」の問題が数々追求されているが、それに対し、ジャーナリストの田原総一朗氏は不満を述べる。

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 安倍内閣が、首相自身予想もしていなかった破綻回路に突入しようとしている。

 9月の内閣改造では「女性活躍内閣」を謳い、女性5人を一挙に大臣にした。その中で最も脚光を浴びたのが、経産相に抜擢された小渕優子氏だ。日本初の女性首相との声も少なからずあり、安倍内閣の支持率アップに貢献すると思われていた。

 ところが、支援者たちの観劇ツアーで支出が収入を大きく上まわっていたことで、公職選挙法違反の疑いありということになり、小渕氏は経産相を辞任した。そして、このとき「うちわ」疑惑で野党から厳しく追及されていた松島みどり法務相も、同時に辞任した。

 松島氏自身には、おそらく辞任の気持ちはなかったと思う。小渕氏の「政治とカネ」問題が逃れられないと判断した安倍首相が、野党の松島氏追及が厳しくなるのを恐れて辞任させたのだろう。この措置は成功したかに思えたが、小渕氏の後任の宮沢洋一経産相の資金管理団体がSMバーの飲食費を政治活動費として支出していたことが明るみに出て、マスメディアの格好の話題になった。さらに、宮沢氏が代表を務めていた政党支部が2007年と08年、外国人が過半数の株式を保有する企業から計40万円の寄付金を受けていたことも明らかになった。

 外国人の献金をめぐっては、民主党政権時代に田中慶秋法相や前原誠司外相が、在日外国人から献金を受けていたことで辞任に追い込まれている。宮沢氏が辞任することになれば、経産相が2人連続して失脚したことになり、安倍首相の任命責任が厳しく問われてくることになる。

 さらに、望月義夫環境相の後援会の政治資金収支報告書に問題があることまで明らかになった。08年から11年にかけて、地元で開かれた「賀詞交歓会」などで、少なくとも920万円ほどの収入があったにもかかわらず、742万円の支出だけが記載されていたというのだ。

 第2次安倍内閣は大臣の途中辞任が一件もなく、600日以上も持続したのに、改造内閣では、まるで茶番劇のように次から次へと問題が続出している。松島法相を辞任させたときは、野党の追及を終わらせる巧みな作戦かと思われたのだが、女性閣僚の2人同時辞任で、野党もマスメディアも「政治とカネ」のスキャンダル暴きという古典的な作業に血道を上げることになってしまった。

 小渕氏の「観劇ツアー事件」は、おそらく父親の時代から行われていたイベントであり、一部情報筋では以前からキャッチしていて、公表のタイミングを狙っていたといわれている。そして宮沢経産相や望月環境相のような問題は、野党やマスメディアがその気になれば、少なからず露呈すると思われる。

 あるいは野党は、「一強多弱」と称される形勢を逆転させ、安倍内閣不信任案でも上程するつもりなのだろうか。だが、野党とマスメディアが「政治とカネ」事件の続出に騒いでいるのに対し、世論は意外にひややかだ。現に、日経新聞の世論調査では内閣支持率が5ポイント落ちているが、朝日新聞では逆に3ポイント上げている。もちろん騒がれている政治家たちに同情しているのではない。しかし、株価は不安定で、アベノミクスの3本目の矢である岩盤規制の改革の成果も不明瞭な中で、国会が「政治とカネ」に血道を上げているのが不満なのである。

週刊朝日 2014年11月14日号


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田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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