接続保留で足止めを食らった鹿児島市のメガソーラー予定地 (c)朝日新聞社 @@写禁
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接続保留で足止めを食らった鹿児島市のメガソーラー予定地 (c)朝日新聞社 @@写禁

 原発廃止へ大きなキーポイントと注目される再生可能エネルギーが“逆走”している。北海道、東北、九州、四国、沖縄の電力会社が一斉に新規接続申し込みの受け入れを停止したのだ。

 ある大手発電事業者の関係者は、こう憤る。

「九州はともかく、四国、北海道はまだ余裕があるのに、一斉に締め切ったことに、政治的なにおいがする。16年に電力自由化をするのでどんどん参入しろと業者に言ったのは安倍政権なのにハシゴを外してきた。原発再稼働をにらんだ政治的な動きではないのか……」

 それにしても、なぜここまで大きな問題になってしまったのか。

 問題の背景には、12年から始まった固定価格買い取り制度(FIT)による、再エネの急速な普及がある。

 14年6月末時点で、再エネの発電設備認定容量は約7180万キロワット。その大部分を太陽光発電が占める。これらがすべて運転を開始した場合、実に100万キロワットの原発約15基分にも匹敵する莫大な電力量となる。制度の導入からわずか2年にして、凄まじいペースで再エネが広がっているのだ。

 これは一見、喜ばしい変化だが、再エネの発電量が急激に増えると、ある問題が生じてくるという。電力需要が少ない春や秋には、各地域の需要量を供給量が上回ってしまい、需給のバランスが崩れて周波数が上昇し、大規模な停電を引き起こす恐れがあるというのが、電力会社側の言い分だ。

 一方、日本での水力を除く再エネの比率はまだ2.2%に過ぎない。すでに20%を超えるドイツ、スペインなど欧州の先進国と比べて著しく低い数字だ。それなのに、早くもこれ以上の普及が制限される事態に陥っているのだ。

 7日の参院予算委員会で安倍首相、小渕経産相にこの問題を追及した民主党政調会長の福山哲郎参院議員がこう語る。

自民党も公明党も、政策集の中で再エネ促進のための送電網の整備をうたっていますし、エネルギー基本計画にも『導入を最大限加速する』という文言が入っています。言葉ではやると言っておきながら、問題がここまで表面化するまで放置してきたのはおかしい。国が前面に出て送電系統の強化に踏み出すべきです」

 確かに、安倍政権が4月に閣議決定したエネルギー基本計画では、再エネについてこう明記してある。

<2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく>

 16年からの電力小売りの完全自由化を見据え、勇ましく推進を宣言したはずが、2年目にして早くも、急ブレーキがかかっているのである。

 それどころか、経産省の新エネルギー小委員会では、買い取り価格を切り下げるなど太陽光発電の新規申請を抑制する方向での検討が始まるなど、“逆走”し始めているのである。

(本誌・小泉耕平、ジャーナリスト・桐島 瞬)

週刊朝日  2014年10月31日号より抜粋