日本女子オープンで高校2年生の永井花奈(17)が3位に輝いた。日本女子プロゴルフ選手権では鈴木愛(20)が優勝、若手女子の活躍が目覚ましい。下支えするのは、ここ10年余りで3倍に増えた“プロ予備軍”のアマチュア層。その躍進の秘密とは──。

 小中高校生対象の「日本ゴルフ協会」の女子ジュニア会員は、2003年の約1400人から現在約4200人と3倍に増えた。その厚い層が生み出す才能を、バックアップしてスターを世に出すのは「日本女子プロゴルフ協会(LPGA)」だ。宮里藍(29)や有村智恵(26)ら中心選手が米ツアーに流出しても、鈴木や森田理香子(24)といった新たな人材が次々と現れ、そのさまは“枯れない泉”ともいわれる。

 LPGAによると、女子の賞金ランキング上位50人の平均年齢は13年で26.7歳。01年の32.9歳より大幅に下がった。

「同じランキングで男子は30~40歳代が目立つのと対照的ですよね」

 そう語るのは、プロゴルファーでゴルフ解説者のタケ小山さんだ。女子ゴルフ界活況の一因として、関係者の多くはLPGAのユニークな教育方針を挙げる。

「あいさつ、身なり、言葉遣いにスピーチの仕方。どれも本当に徹底しているんです」(小山プロ)

 例えば、新人と2年目のプロ選手は、オフに2泊3日の集中セミナーへの参加が義務付けられる。トーナメントの仕組みはもちろん、敬語の使い方、礼状の書き方にいたるまで、ファンやスポンサーを意識したキメ細かいプログラムを受講する。根底に流れるのは女子プロ1期生の樋口久子・前会長が訴え続けた「スポンサーとファンあっての女子ツアー」という理念だ。

「どんなにスコアを崩しても皆、不機嫌にならず、ちゃんとインタビューに答えているでしょ。それもプロの仕事だと教えられているから」(小山プロ)

 こうした徹底した選手教育の成果は、各トーナメント1日前に、プロが主催企業の役員らとプレーをする「プロアマ競技」にも表れる。主催企業にとっては、取引先へのいわば“接待の場”だ。先ごろプロアマ競技に参加した50代の男性経営者は、女子プロにつきっきりで技術指導され、感心したという。

「やはり主催企業に対する好感度が上がりますよね」

 プロアマ競技にシード選手が参加する規定は男女ともに変わらない。ある女子プロ(44)が明かす。

「男子は、本番が気になって上の空の選手も少なくないんです。しかも接待相手は圧倒的に男性だから、しっかり教育を受けた女子プロと一緒にグリーンを回るほうが喜ばれる。『若くて可愛い女の子がロングショットを決める姿がいい!』なんて声も多いですよ」

 取引先が喜べばスポンサーが喜び、女子ツアーをサポートする企業はますます増え、選手のメディアでの露出も増え、裾野が広がっていく。「プロで稼げるのはゴルフだと認識されれば、目指す女の子も多くなりますから」と小山プロ。まさに好循環なのだ。バブル崩壊によるスポンサー撤退などで低迷する男子プロとは対照的な女子ゴルフ界の好調は、こうした仕組みにも支えられている。

 14年シーズンの女子国内ツアーは37試合で、減少傾向にある男子の23試合を大きくしのぐ。それと比例するように賞金総額も32億5千万円と、2年連続で史上最高額を更新した。女性に人気のブランド「サマンサタバサ」や家具大手「ニトリ」など、ツアーへの新規スポンサー参入の動きも目覚ましい。

週刊朝日  2014年10月24日号より抜粋