大阪・ミナミの歓楽街。きらびやかなネオン輝くこの地で、約4年前、日本で初めての「男装ホストクラブ」が誕生した。

「今年9月までは週に3日だけ、系列の飲食店で営業していました。男装した女性がホストをやる店はどこにもなかったのと、そういう女性が働ける場所を確保してあげたかったというのがオープンの理由です」

 こう語るのは、「ヴィクトリアンクイーン」のオーナー・勝山嗣保さん(25)。斬新なコンセプトが奏功し、お店は盛況。今月から新店舗として毎日営業している。

 在籍するホストは全員20代の女性で、大半がFTX(生物学的には女性だが、自分の性別を特定の性別だと自認していない中性的な女性のこと)だという。愛崎アキラハビエルさんも自身をFTXだと自認している。

「昔、男性とお付き合いしたこともありますが、すぐに『違う』と思って2週間で別れました」

 犬飼雄大さんは、同店唯一のFTM(性同一性障害)で、この仕事は水が合っていると語る。

「小5のころ、教育実習に訪れた女子大生の先生に恋心を抱いて、僕は女性が好きだと気付いた。将来的には、男に戸籍を変えようと思っています」

 店はセクシュアルマイノリティーの受け皿にもなっているが、“重い”雰囲気はない。客層の8割が女性。男装ホストは女性客を「お嬢様」、男性客を「ご主人様」と呼ぶ。来客女性の多くは、「ホスト好きなお嬢様」だという。では、女性客にとって、ホストクラブとは何が違うのか。

「ホストクラブは、派手なシャンパンタワーや高級ブランデーをキープするなどミエの張り合いの世界。だが、男装ホストは、お酒が飲めなくても問題ない。ウーロン茶で乾杯して接客するホストもいます」(前出・勝山さん)

 女性客がホストの“奪い合い”をしないので、客同士のトラブルもないという。

「隣のお嬢様同士が仲良くなってしまうようなアットホームな感じ。時には来店したボーイッシュなお嬢様がその場でスカウトされ、男装ホストになったこともあります」(暁月翼さん)

 ネオン街事情に精通する「俺の旅」編集長の生駒明氏はこう解説する。

「90年代に比べると、風俗嬢の所得は半分になった。それに比例して、ホスト産業も売り上げが激減。男装ホストはまだ東京には進出していませんが、隙間をついた商売なので必ずニーズがあるでしょう」

 ホームページへのアクセス数は1日1万ヒット。男装ホストに対する“潜在的ニーズ”は決して少なくない。

(加藤 慶)

週刊朝日  2014年10月24日号