敵は国会にあり (c)朝日新聞社 @@写禁
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「国会議員は月に100万円ももらっていながら、領収書も報告書も出さなくていい。こんなこと普通、あり得ませんよ!」

 9月21日に都内で開かれた新党「維新の党」の結党大会。橋下徹共同代表(45)が久々にほえた。ターゲットは、国会議員に毎月100万円支給される「文書通信交通滞在費」(文通費)。国会議員の給与にあたる歳費(月額129万4千円)とは別に、交通費や郵便代などとして支給されている。

 だが、「議員にはJRの無料パスが別に支給されている。郵便代だって月10万円あれば十分」(ベテラン秘書)というのが実態だ。しかも領収書の提出や公開を義務づけていないため、「毎月100万円の裏金」とも揶揄される。

 橋下氏は、10月分から維新の議員だけでも公開していく、とぶち上げたのだ。大阪在住のジャーナリストが言う。

「橋下さんは大阪府知事時代に知事交際費を廃止するなど、公費の使用に鋭くメスを入れた。地方議員の定数削減や給与カットにも積極的。残るは国会議員だ、ということでしょう。もちろん来春の統一地方選に向けて、低迷する維新の支持率をアップさせようという狙いもあると思います」

 現在、維新は松浪健太、小慎司両衆院議員が公開に向けた取りまとめをしているが、所属議員からは「なんでうちの党だけやらなアカンのか」「自由に使わせてくれや」といった悲鳴が上がっているという。

 同党関係者が明かす。

「うちの党は選挙費用は全て自腹なので、衆院選や参院選でできた多額の借金を、文通費で返している議員が多い。公開となるとそれができなくなるので、みな死活問題ですよ。私設秘書の給与や事務所の家賃に充てている議員もいますが、コツコツためて新築マンションや新車を買った人もいるらしい。とにかく文通費は個人口座に入る便利な金なので、みな内心は橋下さんに大ブーイングです」

 弱り目にたたり目なのが、「結いの党」から「維新の党」に合流した議員たちだという。ある議員が明かす。

「既得権益の打破は江田憲司共同代表の専売特許だったのに、橋下さんに先にぶち上げられてしまった。江田さんは『自分が率先して取り組むべきテーマ。不明を恥じている』と釈明しましたが、屈辱でしょう。存在感は薄まるし、今後の党運営は橋下さん主導でやられてしまう。困りましたよ」

 国会議員側は橋下氏への“対抗策”として、文通費を資金管理団体に寄付し、郵便代や交通費以外にも幅広く使えるようにすることを検討しているという。

 一方、橋下氏は文通費の減額も示唆するなど、改革意欲はとどまるところを知らない。公費の透明化を巡る橋下氏と国会議員のバトル。果たして勝つのはどっちだ。

週刊朝日  2014年10月10日号