「視聴率低いが良作」ドラマ評論家が“TBS版『相棒』”に期待すること 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「視聴率低いが良作」ドラマ評論家が“TBS版『相棒』”に期待すること

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週刊朝日#ドラマ

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、さほど話題にならなかったドラマ『東京スカーレット』(TBS系)の続編を期待するという。

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 先日、テレビドラマのロケ地についての原稿を書くために、ロケ地巡りに行ってきた。アニメでは定番となっている“聖地巡礼”である。

 ネットで検索するとドラマのロケ地をまとめたサイトがいくつかあり、マイナーなドラマでも結構、簡単にロケ地の住所を写真付きで知ることができる。その情報をもとに、お台場と品川区の天王洲アイルを歩いてみた。

 かつて倉庫街だった天王洲アイルは、1980年代にウォーターフロントがおしゃれな観光スポットになって以降は、恋愛ドラマの定番のロケ地となっている。一方、お台場はバブル崩壊と共に開発がストップ。97年に放送された『踊る大捜査線』は、お台場にある湾岸署が舞台の刑事ドラマだが、何もないお台場を揶揄して湾岸署は空き地署と呼ばれていた。今ではフジテレビ社屋を中心とした巨大観光エリアになっているが、街の空気は、そのまま時代時代のドラマに影響を与えてきている。

 さて、現在の東京は2020年の東京オリンピックを控えて、晴海、豊洲、有明、品川、虎ノ門といった湾岸エリアとその周辺の開発が進んでいる。湾岸エリアでは富裕層とエリートサラリーマンに向けたタワーマンションが建築され、過疎化が進みインフラが崩壊する地方の市町村から移住してくる家族もいて、マンション周辺には小学校も増えているという。

 そんな、変わりゆく東京を舞台にしたドラマがTBS系で火曜夜10時に放送された『東京スカーレット~警視庁NS係』(9/9最終回)だ。NS係(Search 1 New Service)は、アラサーの女刑事・鳴滝杏(水川あさみ)と、捜査のためなら手段を選ばない阿藤宗介(生瀬勝久)、そして係長の出町いずみ(キムラ緑子)たちが中心となる新セクション。刑事部門に女性幹部が少ないことが海外の雑誌で問題視されたことを気にした警視庁が、オリンピックに向けて、東京のイメージダウンを避けるために、急遽設立した寄せ集めチームだ。

 脚本家には岩下悠子、櫻井武晴、入江信吾、プロデューサーは須藤泰司という『相棒』に関わったスタッフが参加したこともあり、TBS版『相棒』といった感じの一話完結の刑事ドラマ。犯罪の裏にある、東京オリンピックに向けた開発で“急速に変化している東京”の空気を捉えることに成功している。

 例えば第1話では富裕層が暮らすゲーテッドマンションが登場し、マンション内部で殺人事件が起こる。激安居酒屋チェーンで起きている労働問題なども取り上げられ、東京スカイツリーや東京タワー、タワーマンション等の高層建築と、地を這うように生きている貧困層の労働者やホームレスの姿が対比され、普段は見えにくいが確実に生まれつつある“富裕層と貧困層の格差”が見事に可視化された。オウム真理教を思わせる教団が起こした宗教テロに対し、対策を気にする東京都知事も登場。

 残念ながら、キャスティングも地味で完全オリジナル作品のため視聴率が低く、あまり話題にはならなかったのだが、あの『相棒』も、当初は人気がなかったもののSeason2、3とシリーズを積み上げて、再放送を繰り返したことで今のドル箱コンテンツとなったのだ。

 だから『東京スカーレット』も、これで終わりではなく、20年の東京オリンピックまでは続編を放送し、変わりゆく東京を記録してほしい。

週刊朝日  2014年9月26日号


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