拡大するデング熱被害、越冬の危険性もあるって… 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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拡大するデング熱被害、越冬の危険性もあるって…

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代々木公園には、蚊に注意を促す看板が立てられた (c)朝日新聞社 

代々木公園には、蚊に注意を促す看板が立てられた (c)朝日新聞社 

 約70年ぶりに到来したデング熱の猛威がとまらない。国内感染者は14都道府県で計72人に上る(6日現在)。感染者は東京、埼玉、神奈川、新潟、千葉、大阪、山梨、北海道、青森、群馬、茨城、愛媛など多岐にわたり、いずれも直近の海外渡航歴がなく、代々木公園や、明治神宮外苑、新宿中央公園などの周辺を訪れていたという。

 連日メディアを賑わせているデング熱だが、厚生労働省は「蚊の活動期である夏が終われば終息する」との見解を発表している。

 実際、厚労省ホームページには、「(ヒトスジシマカの)卵を通じてデングウイルスが次世代の蚊に伝播した報告は国内外ではありません」とある。

 ヒトスジシマカは、日本でデング熱を媒介する蚊。つまり、ウイルスを保有する蚊が寒い時期に死滅すれば、デング熱はおのずと終息するという見方だ。

 しかし、次世代の蚊に伝播した報告があるという。害虫防除技術研究所の白井良和氏だ。

「ヒトスジシマカのウイルスが経卵伝達されることは論文で報告されています。ウイルスを保有したヒトスジシマカからの経卵伝達があるとするRosenらの報告(1983年)や、マレーシア郊外でヒトスジシマカの経卵伝達が起こったとするLeeらの報告(2005年)、野外で採集したヒトスジシマカ幼虫にウイルスが検出され、自然条件下で経卵伝達が起こっていることを示したRohaniらの報告(07年)など数多くあります」

 経卵伝達(経卵感染とも)、つまり蚊が産んだ卵にウイルスが継承されれば、ウイルスが越冬することも可能というわけだ。

 帝京大学医学部名誉教授の栗原毅氏はこう語る。

「ヒトスジシマカは9、10月に産卵期を迎えますが、越冬すると思われるのは、9月下旬以降に生まれた卵で、孵化するのは翌年3、4月ごろとなるでしょう。経卵伝達が起きるかどうかは、来春になってみないとわからないわけですが、ウイルスが越冬する可能性は、日本では低いと思います」

 ちょうど今ごろからヒトスジシマカは越冬する卵の産卵準備に入るわけだ。

 来春いっせいに孵化するとしたら……?

「ただ、実験と自然では環境が違いますから、経卵伝達が必ず起こるわけではありません。日本で以前デング熱が流行したのは1942年から44年ですが、それ以降は現在までぷっつり途絶えていました。それは経卵伝達が起こらなかったからでしょう」(前出の白井氏)

 流行が2、3年続いたのは、戦時下で東南アジアなどとの往来が頻繁だったからだと考えられる。また、防火用水槽が方々にあり、現在より蚊の個体数が多かったことも感染拡大の要因だったと白井氏は指摘する。

「過去の事例報告から推測するに、経卵伝達が起こる確率は高いとは言えません。しかし、厚労省の『卵に伝播しない』という見解は一方的であり、可能性はゼロではない」(同)

 万が一経卵伝達が起これば、デング熱は来年夏、今年以上に猛威を振るう恐れがある。

 これまで海外でデングウイルスに感染し、日本で発症した患者を多く診察した東京医科大学病院感染症科長の水野泰孝医師の証言。

「デング熱を媒介するのはヒトスジシマカとネッタイシマカですが、強力な感染力をもつのは東南アジアや中南米など熱帯地方に生息するネッタイシマカです。仮にヒトスジシマカの経卵伝達によりウイルスが越冬したとしても、毎年何万人も発症するような事態には発展しないと言ってよいでしょう」

 デング熱の主な症状は、5、6日間続く高熱と頭痛。特に目の奥が痛くなるのが特徴だ。幼児や高齢者など免疫力の低い人は、症状が重症化することが多いが、死亡例はほとんどない。

 デング熱を予防する方法はあるのだろうか。

「つい先日、フランスでデング熱のワクチンの効果が初めて確認されましたが、まだ実用化されていません。対策と言えば、蚊に刺されないように虫除けスプレーを使うことぐらいでしょうか。日本の虫除けスプレーは海外のものに比べ薬効が弱いので、2、3時間ごとに使うことをおすすめします。ヒトスジシマカはいわゆるヤブ蚊なので、アウトドアでは、特に注意が必要です」(水野医師)

(本誌・上田耕司、古田真梨子、牧野めぐみ/今西憲之、伊藤あゆみ、黒田 朔)

週刊朝日 2014年9月19日号


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