「盗っていません」は逆効果 認知症「物盗られ」妄想の対処法 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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「盗っていません」は逆効果 認知症「物盗られ」妄想の対処法

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 同じ話を何度も繰り返す、「物を盗られた」と騒ぎ立てる、急に怒りだして暴力をふるう――。こうした認知症特有の行動が出たとき、家族はどう接し、ケアしたらいいのか。1984年に日本で初めて開設された認知症高齢者専門病院「きのこエスポアール病院」(岡山県笠岡市)の佐々木健院長に質問形式でアドバイスしてもらった。

Q:同じことを何度も聞かれて、会話が成り立たなくなってきました。会話の途中でついカッとなってしまいます。

A:認知症が進むと、同じことを何回も言う、新しい体験を覚えられないなどの行動が目立ちます。本人には記憶に障害があるので、毎回初めて質問したつもりでいるのですが、忘れてしまうのです。そうした失敗や会話の内容は忘れても、「いつも文句ばかり言われている」というマイナスの感情だけが記憶されます。強いストレスや悲しみ、怒りを覚えると、認知症を悪化させることもあるので、「さっきも同じことを言ったでしょう」と怒らず、同じ内容でもいいので根気よく返事をしましょう。

Q:一生懸命世話をしているのに、近所の人に私の悪口ばかり言います。

A:認知症の人は、身近な人に対して感情が強く出る傾向があります。わがままな態度を取ったり、無理を言ったり。それは甘えたい気持ちの表れであって、例えば母と娘の場合は、「もっと頼りたい」と思っているのです。その一方で、たまにしか会わない人には認知症であることを感じさせない受け答えをします。なので、身近で介護している人は「自分に対していじわるをしている」と思ってしまうのです。近所の人や知人には、家族が認知症であることを知らせておき、介護している人に暴言を吐くなど攻撃が向けられたら話を変えたり、その場を離れてみたりしましょう。

Q:急に怒り始めて、収まりません。どうやって怒りを静めたらいいのでしょうか。

A:今まで穏やかだった人が、急に暴言を吐き、攻撃的になることがあります。何の理由も思い浮かばない時、家族は慌てますが、攻撃性が出てくる理由は「言いたいことがうまく言えない、伝わらない不満」などが考えられます。力ずくで抑えようとするとますます興奮するので、まず家族が落ち着きましょう。それでも興奮状態が収まらない時は、家族はその場を外して、ヘルパーやケアマネジャーなど第三者に対応を頼みます。また、医師に相談して、漢方薬の「抑肝散(よくかんさん)」を処方してもらう方法もあります。感情をコントロールしてイライラを抑える効果があります。

Q:昼夜逆転し、夜中でも話しかけてきたり、家中を歩き回ったりします。

A:認知症の人によく起こる現象です。昼間あまり活動しないで横になる時間が多いことなどが考えられます。体内時計や生活のリズムが崩れた時は、睡眠導入剤に頼らず、なるべくメリハリの利いた生活を心がけるよう促しましょう。介護者の負担が増す時は、デイサービスやヘルパーの生活介助を増やし、介護サービスを利用限度額まで使うなど、制度を有効に活用することを考えましょう。

Q:「物を盗られた」と言いだし、それを防ぐために、部屋のあちこちに物を隠そうとします。

A:財布などの大事なものを自分で片付けたのに、その場所や片付けたこと自体を忘れてしまう。あるいはなくなった物を「誰かに盗まれた」と妄想を抱く。これらが「物盗られ妄想」です。介護している家族やヘルパーに対して言いだす場合が多く、「私は盗ってはいません」と言い張るのは逆効果です。そんな時こそ、「何かお困りですか?」「それは困りましたね、一緒に捜しましょう」と、柔軟な態度で対応すると、認知症の人は落ち着きを取り戻します。また、使ったおむつを隠すのは失敗を人に見られたくないという羞恥心の表れ。粗相をしても叱責しないようにしましょう。

週刊朝日  2014年9月12日号より抜粋


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