CDBが入る先端医療センター (c)朝日新聞社 @@写禁
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 STAP細胞問題に揺れていた理化学研究所発生・再生科学総合研究センター(CDB)の笹井芳樹氏(52)が自殺した。「ノーベル賞候補」だった天才科学者を追い詰めたものは何だったのか。

 今年1月末、STAP細胞の論文が「ネイチャー」に掲載されたのを機に、小保方晴子氏(30)とともに誇らしげに記者会見を行った笹井氏。だが、その直後から論文への疑惑が次々と噴出。週刊誌などでは小保方氏との「不適切な関係」を疑う報道も相次ぎ、一気に追い詰められた。

 心療内科を退院後の4月にようやく開いた会見では、論文の不備を謝罪しつつも、「STAP現象は現在、もっとも合理性の高い仮説として説明できる」と理路整然と語ったが、以降は表舞台に出てくることもなく、沈黙を続けた。

 その間、学者たちからも批判が相次ぐ。7月には日本分子生物学会の幹部らが、STAP論文や理研の対応を問題視する声明を相次いで発表。中でも近藤滋・大阪大大学院教授はSTAPをネッシーにたとえた上で、<「ネッシーを見つけた」と信じうる物は一切無い上に、インチキの証拠はいくつもある>と批判した。

 学会でも四面楚歌に陥った笹井氏を最後に追い詰めたのは、7月27日に放送された「NHKスペシャル 調査報告 STAP細胞 不正の深層」だったという指摘もある。

 番組内では、STAP細胞の論文を検証する過程で理研の調査委員会に提出されたという笹井氏と小保方氏のメールのやり取りまでもが、男女の生々しいナレーションで読み上げられた。

 放送当時の理研内部の様子を、理研関係者がこう証言する。

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