ゴビ砂漠というが、まばらに草は生えている。羊やヤギ、馬、ラクダなど、動物たちと共生する歴史は続いている(南ゴビ県の草原)(撮影/写真部・小林修)
ゴビ砂漠というが、まばらに草は生えている。羊やヤギ、馬、ラクダなど、動物たちと共生する歴史は続いている(南ゴビ県の草原)(撮影/写真部・小林修)
夏の祭り、ナーダムの華はやはり競馬だろう。各地でレースが行われ、少年少女たちが競い合う。中央県での長距離レースのスタート。幼い顔だが、手綱さばきと度胸は魅せる(7月10日、ウランバートル郊外)(撮影/写真部・小林修)
夏の祭り、ナーダムの華はやはり競馬だろう。各地でレースが行われ、少年少女たちが競い合う。中央県での長距離レースのスタート。幼い顔だが、手綱さばきと度胸は魅せる(7月10日、ウランバートル郊外)(撮影/写真部・小林修)
1973年に南ゴビ県を訪ねた司馬さんは、<凄い星空が見られるかもしれない>と、期待に胸を膨らませた。ウランバートルの都市化は進むが、ゴビの夜空は変わらない(南ゴビ県のゲルキャンプで)(撮影/写真部・小林修)
1973年に南ゴビ県を訪ねた司馬さんは、<凄い星空が見られるかもしれない>と、期待に胸を膨らませた。ウランバートルの都市化は進むが、ゴビの夜空は変わらない(南ゴビ県のゲルキャンプで)(撮影/写真部・小林修)
ゴビの主役、フタコブラクダ。司馬さんも乗り、こぶの毛のつかみぐあいは<ラクダの下着の感触に似ている>と書いている(撮影/写真部・小林修)
ゴビの主役、フタコブラクダ。司馬さんも乗り、こぶの毛のつかみぐあいは<ラクダの下着の感触に似ている>と書いている(撮影/写真部・小林修)

 作家の司馬遼太郎が少年のころからあこがれ、ずっとひいきにしていた国、モンゴル。近代化も進んでいるが、いまも民族の基本に「遊牧」があった。

 モンゴルの夏の祭典、ナーダム。競馬のゴールライン付近には、多くの人々がつめかける。

<少年少女が騎手になり、無数の馬が、三、四十キロのコースを一気に駈けるのである>(『草原の記』)

 息子や娘、愛馬を見ようと、ゴール地点は押し合い状態だった。中継の大型スクリーンの前で携帯電話をいじっていると、

「ドコモですね!」

 と、話しかけられた。

「東京外大に留学していました。もっとニッポン、頑張って。中国に負けないで」

 と、励まされた。昔から日本びいきが多い国でもある。

 そのうちますます混んできた。老若男女が詰めかけ、肩や背中にごつごつ当たる。さらにものすごい力で押され、腹が立って振り向くと、人ではなく馬の大群。馬に乗って見物中の「遊牧の後裔」たちだった。

週刊朝日  2014年8月15日号