ガソリンはとうとう160円超えに (c)朝日新聞社 @@写禁
ガソリンはとうとう160円超えに (c)朝日新聞社 @@写禁

 冷夏や異常気象により、日本経済にも打撃を与える「エルニーニョ現象」が起きそうな今年の夏。株高による資産効果で消費は底堅く、消費増税の影響は短期で収束しつつあるが、エルニーニョに加え、原油価格の上昇で日本経済が悪化する可能性がある。

 一番の懸念は、産油国であるイラク情勢の悪化。イラクは、武装勢力と政府との攻防が続いており、反政府軍がイラク北部の油田を掌握。南部の油田まで反政府軍の手に落ちると、石油の供給不安が起きてしまう。

「世界の需要に対して、サウジアラビアの生産能力では補いきれず、ウクライナなど、そのほかの産油国も政情不安で生産増は期待できません。08年並みの1バレル=150ドル近くまで上昇する可能性がないとは言い切れません」(JOGMEC調査部の野神隆之氏)

 現在の原油価格は1バレル=約110ドル。昨年と比べて10ドル程度高い。ガソリン価格は1リットル=160円を超えてきた。専門家からは08年以来の180円台になってもおかしくないとの声も出始めている。

 SMBC日興証券シニアエコノミストの渡辺浩志氏は、こう予想する。

「消費増税後の個人消費は底堅いので、企業は原油高を商品価格に転嫁しやすい。食品の包装材、輸送費の上昇は商品価格に上乗せしたり、価格を据え置いて内容量を減らしてくるかもしれません。電気料金も値上げされるでしょう」

 企業業績も大打撃を受ける。化学業界は原料高に、輸送業界は燃料高に苦しめられることになる。実際、08年は日本企業はコスト高にも苦しめられた。再び日経平均は低迷することになるのかもしれない。

 みずほ証券マーケットエコノミストの末廣徹氏は、こう忠告する。

「エルニーニョと原油高のダブルパンチは、アベノミクス崩壊の鐘を鳴らすかもしれない。ただでさえ生活は苦しいのに、安倍政権がデフレ脱却で物価の上昇を目指せば、疑問に思う人が増えてくるでしょう。安倍政権への支持率にも関わってきます」

 天災だけは「アンダーコントロール」できないのだ。

週刊朝日  2014年7月11日号より抜粋