作家の室井佑月氏は、法人税減税や残業代ゼロなど、企業に有利な法案が進められている現状に不満をもらす。

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 来年度から法人税減税となりそうだ。6月5日付の東京新聞の【特報】、「政策を金で買うのか 経団連『献金あっせん』と法人税下げ」によれば、

「経団連の新会長に就いた東レの榊原定征会長が『政治献金のあっせん』に言及した翌日、政府・与党は来年度から法人実効税率を引き下げる方針を決めた」

 という。企業は減税ぶん、政治献金するってか。企業が自分に有利なように減税や規制緩和などをお願いし、お願いを叶えてくれた政党もしくは政治家に金を渡す。金が渡った政治家は、力を増す。さらにその企業が有利になるよう動く。その企業は売り上げを増し、またその政治家に多額の献金をし……。

(これでオレらの勝ちは永遠だわい。ギャハハ)って感じか。なんつー、わかりやすい癒着の構造。

 新聞にも書かれてあったが、そもそもそういうことが不味(まず)いから(かつてのゼネコン汚職とかさ)、国民の税金で政党交付金を出すことになったんじゃなかったのか。んじゃ、うちらが出している政党交付金をなくすの? まさかね。

 そんなこと考えない。それどころか、法人税減税による穴埋めも、またまた消費税を上げたりしてうちら国民にツケをまわすつもりだ。怒らないし、取りやすいから、という理由で。

 6月9日付の日刊ゲンダイに載っていた「ふざけるな! 残業代ゼロ公務員は適用外だと」という記事も似たようなものだ。

「安倍政権はホワイトカラー・エグゼンプションを、『残業しても残業代が出ないので労働時間が減る』『生産性が上がる』『成果さえ上げればいいので自由な働き方が可能になる』などと、いいことずくめのように喧伝して導入しようとしている。それほど素晴らしい『労働制度』だと言い張るなら、まず『公務員』に適用すればいい」。なのに、6日の「国会で民主党の山井和則議員が『残業代ゼロは公務員も対象なのか』と質問したら、『原則として公務員は対象ではない』と内閣官房が明言したのだ」という。

 そうそう記事の中で経済ジャーナリストの荻原博子さんがいっていたけど、日本人の残業時間が長いのは、政府がいうように「残業代があるから」じゃないんだってね。欧米に比べて日本の残業代は安いんだって。

「つまり、欧米では長時間働かせると残業代が多額になるので、とにかく時間内に仕事が終わるように企業が工夫せざるを得ない。それが高い“生産性”に結びついているのです。もし、“生産性”を上げたいなら、日本も残業代を75%にすればいい」

 でも、絶対にそうはならない。うちら一般国民は大人しいから。大人しいどころか、マゾみたいに自分を虐げる人に進んで投票しちゃったりする。

 これから先、自殺せず生きていくためには、発泡酒を飲みながらワールドカップを観て「幸せ」って思えるようにならなきゃいかんってか。

週刊朝日  2014年6月27日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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