藤巻健史氏 豊かな国ほど子どもが生まれなくなるカラクリ 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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藤巻健史氏 豊かな国ほど子どもが生まれなくなるカラクリ

連載「虎穴に入らずんばフジマキに聞け」

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 政府の有識者委員会が日本の少子化を危惧している。しかし、モルガン銀行東京支店長などを務めてきた藤巻健史氏は、少子化は本当に経済に悪影響を与えるのだろうかと疑問を呈する。

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 大海のごときミシガン湖が凍てつき、弱き日光を受けて銀色に光れるは美観なりき。太陽がいつしか全く影を没し、夕陽が湖の陰から寄せてきて今日もまた暮れようとしている。私は1978年から80年までミシガン湖畔のシカゴ郊外にあるノースウエスタン大学大学院(ケロッグスクール)に留学した。勉学のストレスから少しでも逃れようと散策したミシガン湖畔は、今思い出しても胸がキュンとなるほど美しかった。

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 5月13日に、日本経済の中長期的な課題を探る政府の有識者委員会「選択する未来」が「50年後に1億人の人口を維持する必要がある」との中間報告をまとめた。少子化対策に国内総生産(GDP)の1%(約5兆円)もお金をかけていることに対するお墨付きだ。三村明夫会長は「何もしない場合、極めて困難な未来が待ち受けているという危機意識を共有したい」と指摘されたそうだ。

「危機意識を共有したい」と指摘されても、私には「なぜ少子化だと極めて困難な未来が待ち受けている」のかがよくわからない。経済に悪影響があると聞くが本当にそうか? GDPが減ったとしても、人口が減るのだから1人当たりのGDPは変わらないし、増えるかもしれない。消費者市場が縮小してしまうと言っても、ならば円安にして販路を海外に求めればいい。道路も電車もすくし、広い家に住めるではないか?

 間違いなく悪影響が出るのは、森少子化担当大臣だけだ。担当の仕事がなくなるからだ。あと悪影響を受けるのは、年金をはじめとする社会福祉か。しかしそれならば、確定拠出年金(自分で積み立てた分を自分でもらう)に制度を変更すればいいだけだ。

 ところで私の留学時代に、我が校の隣のシカゴ大学で教鞭をとっていたノーベル経済学者のゲーリー・ベッカー先生が5月3日に亡くなられた。シカゴ学派の大御所である。

 5月9日付の産経新聞の「ポトマック通信」に、先生の考え方が載っている。

「人々が豊かになればなるほど子供が減るのはなぜか。(中略)ベッカー氏は人間は豊かになると、優れた教育などで子供の質を高めようとすると論じた。冒頭の疑問について言えば、親が豊かになって金銭的な余裕ができると、子供の能力の向上にお金や時間をかけることを優先し、子供の数は増やさないと説明したのだ」

「豊かになると子供の数が減る」ことは、歴史的にも地理的にも言える。現在(平成24年)の日本の合計特殊出生率が1.41なのに対し、終戦直後の昭和22年のそれは4.54だ。経済的に貧しいはずのアフガニスタンは5.14、ソマリアは6.67、コンゴ民主共和国は6.04なのだ。そして先生の理論が正しければ、「教育の重要性を理解した日本人は、いくら政府が努力をし、予算を投入しても子供をたくさん産まない」のだ。

 そうならば、年金制度の変更など少子化に見合った社会制度づくりに金をかけるほうが合理的なのではなかろうか? 財政状況が最悪のいま、毎年5兆円もの大金を使っていれば、早々に財政破綻を招き、国は貧乏になる。そうなれば子供は増える。ん、あッ、そうか~。そういう提言だったのか~!(ンンン???)

週刊朝日  2014年6月6日号


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藤巻健史

藤巻健史(ふじまき・たけし)/1950年、東京都生まれ。モルガン銀行東京支店長などを務めた。2013年7月の参院選で初当選。主な著書に「吹けば飛ぶよな日本経済」(朝日新聞出版)、新著「日銀破綻」(幻冬舎)も発売中

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