集団的自衛権は「前提が成り立っていない」と専門家 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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集団的自衛権は「前提が成り立っていない」と専門家

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元内閣官房副長官補 柳澤協二(やなぎさわ・きょうじ)1946年、東京都生まれ。70年、東大法学部卒業後、防衛庁(当時)に入庁。防衛審議官、防衛庁長官官房長、防衛研究所長などを歴任。2004年から09年まで小泉、安倍、福田、麻生政権で内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)として、自衛隊イラク派遣など、官邸の安全保障政策を支えてきた。現在はNPO法人・国際地政学研究所理事長(撮影/写真部・東川哲也)

元内閣官房副長官補 柳澤協二(やなぎさわ・きょうじ)
1946年、東京都生まれ。70年、東大法学部卒業後、防衛庁(当時)に入庁。防衛審議官、防衛庁長官官房長、防衛研究所長などを歴任。2004年から09年まで小泉、安倍、福田、麻生政権で内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)として、自衛隊イラク派遣など、官邸の安全保障政策を支えてきた。現在はNPO法人・国際地政学研究所理事長(撮影/写真部・東川哲也)

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」であいさつする安倍晋三首相(左端)=2013年11月13日午後、首相官邸、越田省吾撮影 (c)朝日新聞社 

「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」であいさつする安倍晋三首相(左端)=2013年11月13日午後、首相官邸、越田省吾撮影 (c)朝日新聞社 

 安倍首相が集団的自衛権の行使容認に向けて動いている。しかし、専門家からは疑問を投げかける声もある。元防衛官僚で、2004年の小泉政権から麻生政権までの5年間、内閣官房副長官補として安全保障と危機管理を担当した柳澤協二氏(67)に話を聞いた。

 安保法制懇は5月15日、「限定的に集団的自衛権を行使することは許される」として、憲法解釈の変更を求める提言を安倍首相に提出。首相も同日の記者会見で、行使容認の必要性をアピールした。

柳澤:「会見で安倍首相は『現実に起こり得る事態に対応して、万全の備えがないといけない』と強調されました。でも私はかねて政府や安保法制懇が挙げる事例というのは、現実に起こり得ないことだと思っています」

 柳澤氏が問題視したのは、安倍首相が会見でパネルを使って例に出した朝鮮半島有事と見られる「邦人輸送」。首相は「船に乗っている子どもたち、お母さん、多くの日本人を助けることはできない。本当にいいのか」と情に訴えた。

柳澤:「首相はパネルまで使って『海外で紛争が発生し、邦人を米輸送艦が日本に送ろうとしているとき、攻撃を受けるかもしれない。でも日本人自身が攻撃を受けていなければ自衛隊はこの船を守ることができない』と説明しました。具体例を出して、集団的自衛権の必要性を訴えたかったのでしょう。でもこの想定は起こり得ない、おかしなものです。

 そもそも日本政府や外務省は紛争が起きる前にその情報をキャッチすることができるし、知ったらすぐに在留邦人に退避勧告を出して民間機などで帰国させる。それから残った人、大使館員などの日本への輸送になりますが、仮に危険な状況が続いているのであれば、落ち着くまで安全な場所に退避していてもらうのが鉄則です。

 銃弾が飛び交い、敵に狙われるかもしれない危険な状況で、わざわざ輸送なんかしませんよ、普通は。事態が落ち着いてから輸送すればいいんですから。圧倒的な戦力差で、制空権、制海権を米軍が押さえているでしょう。それなのに首相は『邦人を輸送する米軍機や米艦艇の護衛をしなければならない。そのためには法改正が必要』と言っている。前提そのものが成り立っていないんですよ」

週刊朝日 2014年5月30日号より抜粋


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