
頻尿・尿意切迫感に対する治療法はいろいろある。治療の全体像について、女性医療クリニック・LUNAグループ理事長の関口由紀医師に聞いた。
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頻尿・尿意切迫感の治療の基本は、行動療法と薬物療法です。
行動療法にはいろいろな方法があり、膀胱訓練はその一つにすぎません。骨盤底筋訓練は腹圧性尿失禁だけでなく、切迫性や混合性の尿失禁にも有効です。どちらの訓練も、他人に知られずに一人ででき、道具も不要なので、セルフケアとして習慣にしましょう。
そのほか、適正体重を維持する、水分やカフェインを摂りすぎない、便秘を防ぐといった生活習慣を守ることも行動療法であり、症状改善に役立ちます。
薬物療法では抗コリン薬とβ3アドレナリン受容体作動薬が主役ですが、三環系抗うつ薬やエストロゲン製剤も用いられます。
私は漢方薬もよく使います。高齢者の過活動膀胱には牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)、冷えを伴う若い女性の頻尿には当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)が有効です。精神的な緊張による心因性頻尿には抑肝散(よくかんさん)も効果があります。
注目の新しい治療法としては、ボツリヌス毒薬の膀胱壁内注入療法があります。ボツリヌス毒薬が持っている、神経伝達を抑制する作用を利用して膀胱神経の働きを抑え、膀胱を弛緩させる方法です。
具体的には、美容外科でシワ伸ばしにも使われるボトックスという薬剤を、膀胱鏡を使って膀胱の内側から膀胱壁に10~20カ所、注射します。日帰りで治療でき、効果は半年から1年ほど続きます。くり返しの治療も可能です。
欧米では一般的な治療ですが、日本では健康保険が適用されておらず、実施施設は少数です。当院では1回10カ所の注射を15万円で実施しています。
このように治療法がたくさんあるので、何らかの方法で症状が改善する可能性は高いと言えるでしょう。
最後に指摘しておきたいのは、頻尿に抗コリン薬を使っても効果がない場合、間質性(かんしつせい)膀胱炎の可能性があるということです。症状は過活動膀胱や心因性頻尿に似ていますが、抗コリン薬は効きません。薬を飲み続けても効果がないなら、泌尿器科専門医にセカンドオピニオンを求めましょう。
※週刊朝日 2014年4月18日号