開かれつつあるセックスグッズ業界。しかし、やはりまだまだ世間的には裏稼業だったことに、文筆家で女性のセックスグッズショップ代表の北原みのり氏は気づかされたという。

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 先日、銀行に融資を申し込んだのだけど、「販売している商品に問題あり」と断られた。法律に違反しているわけではないのに、セックスグッズ業界を支える金融機関はないのが現状だ。

 気がついたら18年近く、バイブを売ってきた。私がこの業界に初めて足を踏み入れた時は、「大人のオモチャ屋」といえば、ガード下などで営業しているもので、女が一人で入れるような場所ではなかった。なんとか入ってみれば、訳ありな感じの年配の女性が、狭い店の奥から、ジロリと睨み付けてくるような、薄暗く重たい空気が流れていた。

 だいたい売られているバイブだって、「くまんこ」「ブラックインディアン」「ファックミー」などという名前で、アイヌ人がと向き合っていたり、真っ黒いインディアンのバイブなど、全てにおいて「政治的に正しくない」世界だった。しかもそういうバイブが、恭(うやうや)しく木箱に入れられ、法外な価格で売られていたのだ(すぐに壊れちゃうのに)。

 この20年で、セックスグッズ業界は本当に変わった。まず働く人の顔が変わった。一般企業から転職してきたり、大学新卒者の就職希望者も珍しくない。バイブの名前だって、「iroha」「Je Joue」「Lora」などとオシャレ。形も、雪だるまとかうさぎとか、カワイイのが一般的だ。メーカー1年補償は当たり前で、家電並みの機能を備えている。ビジネスとしても、グローバル化が求められ、中国語や英語がしゃべれなきゃ、会社として成長できなくなっているのだ。

 という状況なので、私はいろいろと勘違いしちゃったんだな。銀行で融資を断られ、頬をはたかれたみたいに、気がついた。世間からみたら、まだ裏稼業なのだ。……取りあえず私の目標は、銀行からお金を借りられるようになることだわ。

 今週末、アダルトグッズの祭典(「PINK TOKYO」というイベントです)がある。日本で、そんなイベントが開催されるなんて、これも20年前には考えられなかったこと。お台場のディファ有明で、最先端のバイブが陳列される。勘違いしない程度にはしゃぐ予定ですので、大人の皆さん、遊びに来てね!

週刊朝日  2014年3月7日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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