ちょうど参拝前日には、沖縄県の仲井真弘多知事(74)と会談。迷走してきた米軍普天間飛行場の問題に絡み、移設予定先である名護市辺野古(へのこ)の沿岸部の埋め立てについて、承認する方針を引き出していた。

「このまま予定どおり辺野古へと県内移設できれば、米側のフラストレーションは和らぐ。日米同盟はより強固になり、中国への牽制となる」(前出の閣僚)

 安倍首相と距離を置く自民党議員らは、「近隣外交をどう考えているのか」などと不満たらたらであるが、表立っての批判は控えている。公明党からも「今後を考えると残念だ」(山口那津男代表)ぐらいなもの。

「今の安倍さんは沖縄の問題も動かし、批判しづらい雰囲気がある。靖国参拝一点をもって声を上げるのははばかられる」(閣僚経験者)のだという。

 予想どおり中国と韓国は「国際社会への挑戦」「慨嘆と憤怒を禁じえない」などと批判を開始した。

 外務省からは「靖国神社を参拝しないことが、首脳会談実現の前提条件ではないとはっきりと表明できた」との声も漏れる。

 だが記憶に新しい中国全土での反日デモが起きないとは、誰も保証できないのだ。2012年のデモで、日系企業が受けた損害の総額は「数十億円から100億円規模」(政府答弁書)に達した。こうしたリスクを抱えながら、14年は明けた。

週刊朝日 2014年1月17日号