この時期になると皮膚の乾燥やかゆみなどの皮膚トラブルに悩まされる人が増える。今シーズンはとくに、その傾向が強いという。

 川端皮膚科クリニック(東京都調布市)院長の川端康浩医師も、「確かに、今年はかゆみを訴える患者さんが目立ちます」と話す。

 空気が乾燥する秋から冬にかけては、乾燥による皮膚トラブルが起こりやすい。言わば「季節病」のようなものだ。しかしなぜ、今年はとくにその傾向が強いのか。川端医師はその理由をこう推測する。

「夏の猛暑から一転、秋になって一気に冷え込みました。その寒暖の差に体がついていけず、体調を崩した方が少なくありません。そしてこの寒暖差が皮膚症状をもたらした可能性はあります」

 外部からの異物の侵入を防ぐ外壁の機能を果たし、“内臓を写す鏡”ともいわれる皮膚。表皮、真皮、皮下組織という3層からできている。

 表皮のいちばん上、つまり外側にあるのが角層だ。薄い角質細胞が10~20層ほど重なり合い、水分を豊富に含む。この角層の水分を保持する役目を果たしているのが、NMF(天然保湿因子)や角質細胞間脂質、皮脂といったさまざまな保湿成分だ。

 真皮には、皮膚に栄養と酸素を運ぶ毛細血管が張り巡らされ、痛みやかゆみなどを感じる知覚神経が伸びている。毛糸のセーターを着るとチクチクしてかゆくなるのは、この知覚神経の末端が刺激されるためだ。

 どのかゆみも最終的には、この知覚神経が刺激されることで起こるが、そのメカニズムは一様ではないという。川端医師は、この時期に起こるかゆみには、「環境」と「体調不良」、「加齢」が関わっていると話す。

「環境とは、空気の乾燥のことです。冬は夏に比べて湿度が低い上、エアコンなどの暖房でさらに空気が乾燥しがち。角層から水分が奪われて、皮膚も乾燥してしまうのです」(川端医師)

 例年は夏から秋、冬へと徐々に乾燥していくが、今年は一気に冬になり、乾燥が進んだ。そのため、皮膚が対応しきれていない可能性があるというのだ。

 角層が乾燥すると角質細胞が縮み、細胞と細胞の間に隙間ができる。その隙間から水分が蒸散するため、乾燥はいっそう進む。角層のバリア機能も失われるため、外部からの刺激を受けやすくなり、かゆみが出やすい。この状態を「皮脂欠乏症」と呼び、とくに下肢に起こりやすいという。

週刊朝日 2013年12月20日号