郵便不正事件で逮捕されるも無罪となった村木厚子厚生労働事務次官が『私は負けない』(中央公論新社)を上梓した。164日もの拘留生活を耐え抜いた“秘訣”をコラムニストの北原みのりさんが、直球勝負でズバリ切り込んだ。

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北原:『私は負けない』、拝読しました。負けないための闘いに必要なのは、折れない心、体力、プロの支え、家族、経済力とこの五つが揃う幸運、という村木さんの闘い方、ぜひ教えてください。

村木:自分で意識したことはなかったんですよ。ただ今回裁判をやってみて思ったことが、一つは割と私は楽しむことを見つけるのが上手なんだなということ。裁判の傍聴に来ていた江川さんを見つけたときには、「あ! 江川紹子だ!」って(笑)。2人の娘たちもそうで、「江川紹子が東京からわざわざママの裁判を聴きに来てる!」って大騒ぎなんです(笑)。もう一つは、あまり高望みをしないことですね。

北原:目標設定を低くするとおっしゃっていました。

村木:私はずっと同じ仕事をやってきましたので、目標設定が低くても、長い時間をかければ、ずいぶん遠いところまで行けるというのがわかりました。その距離というのは、どんなに足が速くても、馬力があっても、短い時間ではたどり着けない距離なんです。せっかくここまで来たんだから、もう少し歩こうか、坂道がきつくなってきたけど、もうちょっと登ってみようか。そうやって、ここまで来たような気がしています。

週刊朝日  2013年12月13日号

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北原みのり

北原みのり

北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。女性のためのセクシュアルグッズショップ「ラブピースクラブ」、シスターフッド出版社「アジュマブックス」の代表

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