山田正彦(やまだ・まさひこ)1942年、長崎県生まれ。早稲田大学を卒業し、69年に司法試験合格。その後、郷里の五島で牧場を経営。93年衆院選で初当選し、2010年に農水相。最新刊の『TPP秘密交渉の正体』(竹書房)は11月28日に発売(撮影/写真部・工藤隆太郎)
山田正彦(やまだ・まさひこ)
1942年、長崎県生まれ。早稲田大学を卒業し、69年に司法試験合格。その後、郷里の五島で牧場を経営。93年衆院選で初当選し、2010年に農水相。最新刊の『TPP秘密交渉の正体』(竹書房)は11月28日に発売(撮影/写真部・工藤隆太郎)

 TPP(環太平洋経済連携協定)交渉で注目される「コメの関税」。山田正彦元農水相は10年後には「関税ゼロ」になると予告する。

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 安倍晋三政権が「聖域」とするコメが「関税ゼロ」になるまであと10年、長くても15年でしょう。私が国会議員としてTPP問題を調査していた2012年初頭のことです。米国でTPP交渉を担当するUSTR(米通商代表部)のマランティス次席代表(当時=以下同じ)と話をしました。そこで私が「コメの関税は守られるのか」と聞いたら、彼ははっきりと「無理だ」と答えました。

 日本の政治家や官僚と違って、米国人は質問に対してあいまいな回答はしないんですね。関税撤廃までの工程は「長期ステージ」という言い方をして、10年の猶予期間を念頭に置いていました。

 その後、マレーシアやベトナムの交渉担当官にも同じ質問をしました。みんな答えは同じです。いま、自民党の有力議員がコメ分野の関税撤廃に前向きな発言をしていますが、それは関税撤廃がTPP交渉の前提となっているからです。

 政府がTPPの交渉参加について検討中だとはじめて聞いたのは、10年の夏でした。当時は菅直人内閣で農林水産大臣をしていました。関係閣僚会議で経済連携の話をすることになり、私も呼ばれたのです。そこで突然、岡田克也外務大臣がTPP参加の方針を打ち出しました。私は即座に「内容も知らずにいい加減なことを言ってもらっては困る」と反論しましたが、同席していた仙谷由人官房長官は、「開国なくして、座して死を待っていいのか」と援護する。しかし、彼らはTPPの本当の姿を知らないので、いくら言っても私の話を理解できない。結局、その日は物別れに終わりました。そして私は9月に農水大臣を辞めることになりました。

週刊朝日  2013年11月29日号