認知症の母とバツイチ還暦息子の物語『ペコロスの母』映画化 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

認知症の母とバツイチ還暦息子の物語『ペコロスの母』映画化

このエントリーをはてなブックマークに追加
週刊朝日

 本誌で連載中の漫画「ペコロスの母の玉手箱」を手がける岡野雄一さん(63)の初の著作『ペコロスの母に会いに行く』が実写版映画になり、11月16日から全国公開される。

 ボケてしまった母とハゲちゃびんの息子。クスッと顔がほころんだかと思うと、どこか切なく、胸にジワリと迫ってくる。笑いと哀切の連続で、スクリーンから目が離せない――。

 映画は親子2人の主人公を軸に展開していく。

 施設に暮らす「みつえ」は89歳。認知症を発症し、重い脳梗塞も患う。そんな母親のもとへ週2回ほど通うのが息子ペコロスこと「ゆういち」だ。老老介護の現場の日常をあふれるユーモアで包み込む。

 メガホンをとったのは書劇映画の巨匠とうたわれる森崎東監督(85)。ペコロス役の岩松了さんと、みつえ役の赤木春恵さんは、実に味わい深い演技を披露する。このほか、若かりし日の父さとる役に加瀬亮を始め、実力派で知られる俳優たちが脇を固める。

 原作者の岡野さんは長崎市生まれ。高校卒業後に上京し、出版社に勤務したが40歳で離婚、3歳の息子を連れて故郷に戻った。タウン誌などに描いていた漫画をまとめ、自費で『ペコロスの玉手箱』などの冊子を製作すると、優しいタッチとさわやかな作風が反響を呼び、全国にファンが増加。2012年7月に初の単行本『ペコロスの母に会いに行く』が西日本新聞社から出版され、いまや16万部を売り上げるベストセラーに。その出版直後、映画化の話が舞い込んだ。

「特別なヒーローが登場するわけでもなく、僕と僕の母を描いただけの地味な漫画。本当に映画になるかと心配でした」(岡野さん)

 だが、その懸念は完成試写を観たときに打ち砕かれた。原作を忠実に追いかける一方、映画でしか表現できない世界へと観客を導く構成に、岡野さんは圧倒されたという。

 13年前に父が他界すると、みつえの認知症が少しずつ進行していく。あるときは亡くなった父のために酒を買いに出かけ、あるときは息子が帰ってくるのを駐車場で待ちわびて轢(ひ)かれそうになる。タンスの引き出しからは汚れた下着が大量に見つかって、家族はうちひしがれる。

 しかし、映画はそうした現実にだけスポットを当てるのではなく、過去の記憶を遡(さかのぼ)っていく母親の内面を丁寧に追う。幼くして亡くなった妹たちまでを思い出し、「会いに来てくれた」とつぶやき、満面の笑みを浮かべる。

「死んでからのほうが、うちによう会いにくると」

 みつえ役の赤木さんは現在89歳で、役者人生で初の映画主演となる。記憶の狭間を自在に行き来する演技は、見応え十分だ。

週刊朝日 2013年11月1日号


トップにもどる 週刊朝日記事一覧

続きを読む

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事

あわせて読みたい あわせて読みたい