国家戦略特区とは、安倍晋三政権が成長戦略のひとつに据える制度だ。企業側が簡単に解雇できるようにしたり、「残業代ゼロ」を認めたりする制度改革も話し合われた。「残業代ゼロ」は先送りとなったが、解雇のハードルを下げる「クビ切り特区」は、まだ完全に消えたわけではない。

 国家戦略特区の制度設計を検討するワーキンググループの八田達夫座長が10月4日の記者会見で、「クビ切り特区」の対象を弁護士・公認会計士などの専門資格や修士・博士号の取得者といった「高度な人材」に絞る案を示したと明らかにしたのだ。

 猛反対に遭って「縮小」したようにも見えるが、いったい安倍政権は何を狙っているのか。日本労働弁護団常任幹事の棗(なつめ)一郎弁護士は、こう読む。

「特区を一度認めれば、これが『蟻の一穴』となり、最終的には専門職以外の労働者すべてに対象が広がる恐れがあります」

 クビを切りやすくすることが景気回復の役に立つと考えているのだろうか。日本総研の

 山田久チーフエコノミストが語る。

「雇用制度の変更は、労使の合意が前提でしょう。そのうえで政府が、企業側には産業振興、労働者側に賃上げと失業者対策を講じる。この3点をセットで議論しないと、日本経済は活力を取り戻しません」

週刊朝日 2013年10月25日号