月10回乗るマニアに「オフ会」も 創業65年の「はとバス」の世界 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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月10回乗るマニアに「オフ会」も 創業65年の「はとバス」の世界

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週刊朝日
人気バスガイドの木村ひろみさん(右)と鈴木彩香さん(左)(撮影/門間新弥)

人気バスガイドの木村ひろみさん(右)と鈴木彩香さん(左)(撮影/門間新弥)

撮影/門間新弥

撮影/門間新弥

記念写真の「定番スポット」二重橋前では、みんなで記念撮影(撮影/門間新弥)

記念写真の「定番スポット」二重橋前では、みんなで記念撮影(撮影/門間新弥)

熊本から来た森万希子さん・征四さん(撮影/門間新弥)

熊本から来た森万希子さん・征四さん(撮影/門間新弥)

 東京の名所で必ずと言っていいほど目にするのが、おなじみ黄色い「はとバス」だ。ふと気になってホームページをのぞくと、意外や意外、気になるツアーが盛りだくさん。秋の行楽シーズン、バスで東京再発見はいかがでしょう。実際に乗車してレポートします。

 いざ、出陣である。まずは、ちょっと渋く、昭和24年に、はとバス都内観光が始まった当時とほぼ同じコースを走るという「懐かしの昭和浪漫紀行」(6980円)に挑戦。昭和に活躍したベテラン名ガイドが案内してくれるという。コースは、靖国神社→皇居前広場→東京タワー大展望台。いずれもわが社から半径5キロ以内だが、見慣れた風景を車窓から見ると、どう見えるのだろう。

 集合は午前9時。東京駅のはとバス窓口に行くと、バス停周辺は100人を超える人でごった返していた。このツアーの参加者は30人余り。年配客が多いが若いカップルもちらほら。

 東京駅を出発すると、まずは皇居を半周。数年前までは朝日新聞の宮内庁担当として皇居の中にある宮内庁へ通勤していた私としては見慣れた風景だ。

 ベテランガイドの木村ひろみさん(53)の案内が始まった。「皇居の大手門は、2代将軍徳川秀忠の命令で伊達政宗がつくりました」。え? いつも通っていたのにもかかわらず、それは初耳。初っぱなから「はとバス」に一本とられる。日本武道館前では「東京オリンピックでは柔道の会場でした。2020年のオリンピックではリニューアルして使用予定です」とタイムリーな解説も。

 靖国神社が近づくと、いきなり木村さんが歌いだした。島倉千代子の「東京だよおっ母さん」。「やさしかった兄さんが~桜の下でさぞかし待つだろ」と歌う木村さんの美声を聞きながら、靖国神社に到着。私の祖父もレイテ島で戦死した。

 これまで、お花見に来て一杯飲んで楽しんだことはあったけれど、参拝は初めてだ。「遊就館」には戦死した特攻隊の若者たちの手紙がずらりと並ぶ。中に、舅、姑と折り合いが悪い妻を最後まで気遣っていたらしく、「自分が死んでも、いい縁があって再婚するまで、家においてやってほしい」と書かれているのを読み、なぜかとてもグッときた。

 お参りを済ませた後、木村さんが「東京で一番おいしい」と絶賛する参道脇のお土産物屋のソフトクリーム(200円)を食べながら、私の祖父も、果たしてここにいるのだろうか、と考える。確かにソフトクリームは、牧場で買うような濃厚な味わいだった。

 続いて、皇居前広場へ。二重橋をバックに、全員そろって記念撮影。こういう記念写真を撮るのは高校生以来だ。1300円は少々お高いと思いながらも、ついつい買ってしまう。

 ツアー開始から半日経過し、だんだん、一行は打ち解けた雰囲気に。森万希子さん(21)は祖父の征四さん(77)と熊本県宇城市からやってきた。この日は征四さんの誕生日。万希子さんが誕生祝いにプレゼントしたそうだ。なんていい子なのかしら。

 さて、そろそろお昼。皇居近くのレストハウスでお弁当をいただく。このとき一行の中に、ガイドさんとしきりに話している男性に気づく。大塚順一さん(55)だ。

 なんと、大塚さんは多いときは月10回もはとバスに乗るという「はとバスマニア」。大塚さんとお弁当を食べながら、「はとバストリビア」を教えてもらう。

 マニアの間では、同じ日に昼夜2回乗ることを「ダブル」、朝昼晩3回乗ることを「トリプル」というのだそうだ。15年ほど前から、はとバスにはまり、乗ったら必ず宝物のノートに車番やガイドさんの名前などをつけておく。新人ガイドたちがだんだん解説がうまくなっていくと、「親気分」でとてもうれしいという。

 驚いたのは、ツアーで顔見知りになった「はとバスマニア」が集まり、情報交換の「オフ会」があると聞いたとき。AKBファンと電車オタクを足したような「はとバスマニア」の世界があるんだなぁ。そして「ガイドにあなたに似てる子がいるよ」と、かわいらしいバスガイドさんの写真を見せてもらい、すっかりいい気分になる。

 お弁当を食べ終え、大塚さんと一緒に東京タワーにのぼる。毎日、目にするタワーだが、上まであがることはめったにない。好天に恵まれ、東京が一望できる。が、私は高所恐怖症だ。そんな私におかまいなく、大塚さんは、床がガラスになって真下がのぞける「ビューポイント」につれていってくれる。

 こわごわ下をのぞくと、偶然、2階建てのオープンバス型のはとバスが2台連なって通った。「おお、オープンが来たぞ! 2台も」と興奮する大塚さん。なぜか私も恐怖を忘れ、うれしくなった。「東京タワーと同じ年なんだ」と笑顔を見せる大塚さんがどこかほほ笑ましい。

 さて、ベテラン大塚さんの、おすすめはとバスツアーは、やはり定番の「東京タワー」と「東京スカイツリー」だという。日を改めてスカイツリーのツアーにも、担当カメラマン(男性)と2人で行ってみた。

 東京湾をクルージングしてフレンチのディナーをいただきながら、昨年開通した新名所・東京ゲートブリッジなどの夜景を堪能する「シンフォニーサンセットクルーズと夜景の東京スカイツリー天望デッキ」(9980円)。料理は美味で夜景は絶景。

「できれば仕事ではなく、プライベートで……」と忸怩(じくじ)たる思いだったのは、カメラマンも同じだったに違いない。

週刊朝日 2013年10月18日号


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