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 ついにその日がやってくる。国民的現象にもなったNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」が、9月28日に最終回を迎える。作家でコラムニストの亀和田武氏は、主役の天野アキを演じた能年玲奈の今後をこのように予想する。

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 周囲には、とくにオーバー50の男性にファンが多い。

 知り合いの深夜カフェのオーナー(純喫茶「アイドル」のマスター、甲斐さんそっくり!) は、オンデマンドで必死に遅れを取り戻し、北海道にいる伯父は「老人会のゴルフが、『皆があまちゃん見る』という理由で午前8時から8時半開始に延びた」と言ってました。

 朝ドラに無縁だった人たちを、一斉に引きつけてしまったんです。そこがすごい。

 テレビはこの10年で力を失ったと言われてきました。北三陸ではないけど、どん詰まり状態だった。でも、ちゃんとしたドラマを作れば、新しい層を開拓したり離れた人を呼び戻したりすることができる。テレビの力は偉大だってことを、「あまちゃん」は証明してみせたんじゃないかな。テレビ文化の復権ですよ。

 その礎になったのが「笑い」でしょう。僕がすごく好きなのは、映画「潮騒のメモリー」撮影シーン。アキが鈴鹿ひろ美演じる母の元に駆けつける場面で、太巻が「生まれたての鹿みたいに」と足をガクガク震わせて演技指導した。実は僕の仲間うちで、あの足のギャグをもう40年くらいやっているんです。へへッ。喜劇役者の有島一郎がサラリーマンの宴会芸のシーンなんかでやっていたものなんですけど、古田新太がやったのはホントに感動したな。

 アキやユイのほかにも、魅力的な子はいっぱいいたなあ。夏ばっぱの若いころをたった1日だけ演じた徳永えり。春子のアイドル志望時代を演じた有村架純。「落ち武者ならぬ影武者」として小首を傾げながら歌ったシーンはいじらしく、泣けましたねえ。

 能年さんの今後ですが、いずれ大河に出たり土曜ドラマに出たりすると思う。いや逆にね、出なくなったっていい。天才詩人といわれたランボーが15、16歳でデビューして、でも18歳から詩を書かずに砂漠の商人になったように、彼女が別の道に進んでも、「伝説」になっていくでしょう。

 僕ね、「あまちゃん」放映中に舞台の岩手県久慈市を訪れるかどうか迷ってるんです。北リアスの海岸を心に焼き付けたくってね。

週刊朝日 2013年10月4日号