中国の食品汚染がどんどんと悪質、巧妙、大規模になってきている。ここ数年で数多くの食品汚染問題が発生しているが、2011年から13年の間に一気に増えたと上海のライター・杜丘由宇氏はいう。

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 11年以前にも、理髪店で集めた人毛からアミノ酸を抽出し醤油を製造した事件(04年)やアヒルの卵に工業用着色剤“蘇丹紅”を用いた事件(06年)、有害物質メラミンが粉ミルクや牛乳に混入した事件(08年)などが大きな話題になったが、11年春からそれまでを上回る頻度で、衝撃的な食品汚染事件が多発している。

 その口火を切ったのが「双匯“痩肉精”事件(そうかい“そうにくせい”じけん)」だ。国営テレビ局の中国中央電視台(CCTV)の番組が、中国最大手の食肉加工会社、双匯の豚肉供給業者が発がん性が認められている“痩肉精”を使用したことを暴露した事件で、その後、「着色まんとう事件」や「ホルムアルデヒド漬け毛血旺事件」、「工業用漂白剤使用乾燥湯葉事件、」「亜硝酸塩鶏唐揚げ事件」など、社会を揺るがす事件が相次いだ。

 なぜ11年から事件が急増したのか。ひとつの原因は、双匯“痩肉精”事件を機に、中国政府が食品汚染事件を積極的に公開する姿勢を示したことである。

 政府の背中を押したのが、現在5億人強がアカウントを持つミニブログ「微博(ウェイボー)」だ。微博は11年3月11日に発生した東日本大震災と、同年7月23日の中国高速鉄道事件をきっかけに急速に普及した。この普及により、政府が事件を隠したくても隠せない環境が生まれたのだ。

 先ほど挙げた事件は、この二つの出来事の間に起きている。微博の書き込みにより明るみに出た「アルカリ性洗剤混入プレミアム牛乳事件」の例もあり、直接・間接的に微博が食品汚染事件を公にする役割を担ってきたとみて間違いない。

週刊朝日 2013年9月20日号