ヴァン・ヘイレンなど往年の人気バンドが今年、続々と来日し、チケットは売り切れ。その影響で70年代ロックの再ブームが起こっている。時代の目撃者である洋楽雑誌『ミュージック・ライフ』伝説の編集長、東郷かおる子氏と来日ロックスターらの素顔を撮った写真家、長谷部宏氏が、秘話を語り尽くした。
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――1976年は渋くイーグルスが来日しました。
東郷:私はグレン・フライが一番、好きだった。「ホテル・カリフォルニア」の頃、一緒に撮った写真は今も宝物。アルバムも、デカダンで素敵でしたね。彼らはジーパンにTシャツ姿と西海岸っぽいスタイル。日本はその後、雑誌『ポパイ』が創刊され、西海岸がブームになりました。
――77年はKISSです。
東郷:クイーンを先頭に、KISSとエアロスミスで、『ミュージック・ライフ』が御三家にしたの。この三つが70年代ロックの代表になるわけ。
――芸者さんと並んで撮影もしてます。
長谷部:ジーン・シモンズはカメラを向けると舌を出すんだ。何枚撮っても同じポーズでさ。
東郷:彼らはサービス精神旺盛で特にジーンはプロフェッショナルだった。
――78年にはヴァン・ヘイレンが来てます。
長谷部:こんときも元気だったけど、2回目の来日では(79年)、ローラースケートを履いてホテル中を滑ってたんだ。
――ハンバーガー事件というのもあったそうですね。
東郷:デビッド・リー・ロスから「撮影にハンバーガーを50個用意して積み上げろ」と要望があって、きっと大変なことになるだろうと予想して、スタジオを借りてビニールシートを敷き詰めたんだけど、メンバーが来て5分後にはシートは全部どっか行っちゃった。彼らが投げたハンバーガーでぐちゃぐちゃになった部屋を見て、スタジオの人はワナワナよ。「弁償してもらいますから!」って。
長谷部:彼らは新幹線の中でも好き放題。後ろにヤーさんの団体が乗っていたけど、わからないから勝手にシートを倒したり、自分たちのコンサートのチラシを配ったり(笑)。
東郷:知らないって怖い。ヤーさんも外国人だからしょうがないなって感じ。
――当時はみんな桁外れで面白いですね。
東郷:幸せな時代だったのよね。この時代のミュージシャンは今も頑張ってる人たちが多い。足腰強いのよ、バンドとしても、音楽的にも。みんな顔見ると若いじゃない?
長谷部:今も生き生きしているね。
※週刊朝日 2013年9月13日号