約1年9カ月の服役を経て“シャバ”に戻ってきた元ライブドア社長の堀江貴文氏だが、つい先日、自身が携わる民間有志団体でロケットの打ち上げに成功したという。

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 我々の民間有志ロケット開発団体「なつのロケット団」は、法人として私の持ち株会社であるSNS株式会社とその子会社インターステラテクノロジズ株式会社が中心となり、数名の専任者とインターステラテクノロジズ出資者主体のボランティアで構成されている。

 8月10日の早朝に北海道大樹町で、ロケット(500kgf級)の打ち上げ実験に成功した。エンジンは二十数秒燃焼し、約40秒で最高高度6500メートルに達し、最高速度はマッハ1.12を記録した。

 2回続けてこのクラスの打ち上げに失敗していたので感無量の大成功であった。単に打ち上げが成功しただけでなく、シミュレーションした飛翔経路とほぼ同じ軌道で、着水予想地点もそれほど誤差がなかった。

 また、GPSのデータを遠隔無線で送ることにも成功したので、その軌跡をグーグルアースに表示することも可能になった。立体的に飛翔経路をこんなに簡単に見られるなんて、本当にいい時代になったもんだ。

 これは打ち上げに協力的な地元自治体や漁協の皆さん、そして打ち上げ業務を担当したHASTIC、及び植松電機さんの協力によるところが大きい。この場を借りて感謝したい。

 このクラスの機体の打ち上げが成功したことで、もっと大型のエンジンや、宇宙空間と世界的に認識される高度100キロメートルを狙える機体を打ち上げる技術獲得がやっと見えてきた。空気が薄くなると空力制御することが不可能になるので、姿勢制御をするための機構が別途必要となるが、その開発も行っている。

 機体のドラスティックな軽量化も必要だ。オリジナルの極超低温用電動バルブも開発中だし、やることはたくさんある。しかし高度100キロメートルを格安で打ち上げるロケットが実現すれば、その用途は引く手あまたである。

 しかし、ロケットはいろいろな要素技術の結晶なのと同時に、軍事転用されてしまう可能性がある。そのため、民間が開発を担うことが難しいという課題もある。軍事転用の危険性から、外国人が関わることは難しく、私たちがアメリカで日本国籍のままロケット開発をするのは不可能に近いらしい。となれば、その国にある要素技術でやるしかない。

 日本は立地に恵まれている。なにしろ東南海上には広大な太平洋がある。これが北朝鮮だとこうはいかない。北朝鮮だと打ち上げる度に日本の領海上の経路しか飛ばせないが、日本は公海方向に飛ばせるのである。

 しかし、日本独特の課題として漁場の問題がある。今は高度が出ていないので地元の大樹漁協プラス近隣の2漁協の漁期を外して打ち上げを行っているが、もっと遠くまでとなると話が変わってくる。他の漁協とも話をしなければならないし、さらに飛行機の国際線航路も通っているのである。

 やはり宇宙行政がリーダーシップをとって、民間宇宙船が簡素な申請で打ち上げ業務をできるような体制を作ってほしいと思うのである。アメリカの場合は広大な砂漠があるので、その辺はかなり簡素な仕組みが作られているという。

週刊朝日 2013年9月6日号