人気のNHK連続テレビ小説『あまちゃん』で大物芸能プロデューサーを演じている、俳優の古田新太さん。ネットで書き込まれる“ネタ”があるという。

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 太ってきた。また太ってきた。

 おいらは、TVや映画など映像の現場に入ると太る。何故なら、朝早くに起こされて、朝食(主におにぎりと唐揚げ)を食わされ、きっちりと昼休憩を取ってお弁当(主に中華やハンバーグ)を食べ、夜休憩で夕食のお弁当(主に肉とか魚)を食べ、夜中を過ぎると夜食(主に牛丼とか焼きそばとかハンバーガー)を食べるのだ。そりゃ太るわ。え~、そんなことないでしょ。「TVに出てくる俳優さんや女優さんは、細くて綺麗な人ばっかりじゃないか」。そーなのだ、みんな節制しているのだ。

 空き時間にジムだのヨガだの加圧だのに行っているのだ。気を使っているのだ。おいらは節制しないし気を使わない。出された物を素直に食べる、所謂(いわゆる)、無頓着なのだ。そんなにお腹が空いてないのに、香盤に合わせてがっつり食べる。フォアグラ用のアヒルである。しかも映像は汗をかいちゃいけない。

「アクションシーンとかで汗をかいているじゃないか」。いやいや、あれは汗を足しているのだ。決してかいているわけではない。いくら汗っかきの役でも駄目なのだ。髪型が崩れてしまう。カットが変わった時の様子が違ってしまう。俗に言う「繋がらない」というやつだ。だから汗をかかない為にも、極力動かない。そりゃ太るわ。「いやだってみんなは……」。だからジム行ってんだって。「じゃあ、お前も……」。行かないんだって、面倒臭いから。

 さて、今は舞台の稽古にも入っている。舞台の仕事をすると、確実に痩せる。それは何故か。まず、昼前に起きる。昨日の酒が残っているので当然朝飯なんか食えない。コーヒーをじゃぶじゃぶ飲んで、煙草をぷかぷか吸って劇場に向かう。ストレッチしたり、筋トレをやって一汗かく。舞台では大暴れするので、舞台前には何も食わない。昼公演が終わっても、ぐったりして食欲がない。でも、何かお腹に入れとかなきゃ夜公演もたない。うどんとか蕎麦でお茶を濁すことになる。ここで、丼やカレーを食ってはいけない。何故なら、舞台上で逆流してくるからだ。ラーメンなどもしかりだ、揚げ物やカレー味のゲップは辛い。だから、うどんや蕎麦なのだ。

 夜公演が始まる。筋肉的には疲れているが、酒も抜け体は軽い。また舞台でブタ汗をかいて、9時とか10時に終了。観に来てくれたお客さんと飲みに行く。おいらは、飲んでる間はあまり食べない。いっぱい飲んで酔って家に帰る。そして寝る。また昼に起きて、何も食わずに劇場に向かう。故に痩せる。故に健康、というのはどうだ。規則正しい食事より、不摂生の方が健康だ。

 大体、規則正しい生活ってなんだ。誰が一日3食って決めたんだ。お腹が空いた時に食べればいいじゃないか。規則正しい生活って、誰かが便利だから決めたんじゃないのか!

 またどうせネットで「古田また太る!」「古田激痩せ」とか書かれるんだろうな。舞台が続いて痩せた時、必ず「どこか悪いの」と聞かれた。あーっ、今気が付いた。痩せたり太ったりするから心配かけるのか。キープしておけば何も言われないのか。その為には何だ? 節制か? だからできないんだって。

週刊朝日  2013年7月19日号