テレビで共演した橋下徹大阪市長が「小金稼ぎのコメンテーター」と発言したことに怒り水道橋博士さんが番組降板を宣言した問題について、作家の室井佑月氏は問題にするところが違うと意見する。

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 巷では、日本維新の会の共同代表の橋下徹・大阪市長と水道橋博士さんのテレビでのやりとりが話題になっている。スナックに飲みにいったら、みんながその話をしていた。やべぇ、完全に乗り遅れている?

 家に帰って、問題のテレビ番組をネットで観た。6月15日放送の「たかじんNOマネー」という番組だ。「橋下市長の『従軍慰安婦発言』問題アリ? 問題ナシ?」という質問に対し、コメンテーターは全員「問題アリ」と答えた。ちなみに番組では視聴者投票も行っていて、そこでは約8割が真逆の「問題ナシ」だった。その結果について橋下さんは、「やはり有権者の方は冷静だなと。小金稼ぎのためのコメンテーターとは違いますよ」と発言した。その一言にムカついた水道橋さんは番組の最後に立ち上がり、「橋下さんが小金稼ぎといったので、僕、今日で番組を降ろさせていただきます」といって、スタジオから消えた。

 途中で帰ったら、小金を貰いはぐれちゃうよ。いいの? ええ、あたし、コメンテーターで稼いでおりますが、そのことでなにをいわれてもべつに構わない。んじゃ、橋下さんがあたしの家族を食べさせてくれるのかって話で。

 ま、そんなことはどうでもいい。今回の一連の橋下発言についてだ。そもそものきっかけは、5月1日に橋下さんが沖縄県の米軍普天間飛行場を視察した際、そこの司令官に、「もっと真正面からそういう所(風俗業)を活用してもらわないと、海兵隊の猛者の性的なエネルギーをコントロールできない」などといったと、自らが記者団に明かしたことだ。その話から従軍慰安婦問題にまで発展してしまった。橋下さんが「従軍慰安婦は必要だった」とまでいって。

 それから、一部の人々やメディアが「橋下は女性蔑視である」と騒ぎ出したんだ。海外からも文句いわれたしな。女性蔑視? あたしは女だけどそう思わなかった。もともとの橋下発言の意図は、この国にいるやりたい放題の米兵に対しての嫌味だったんじゃないの?

 慰安婦の問題にしても、それ自体があったかなかったかをメディアは蒸し返し盛り上げるのではなく、だから略奪やレイプが行われる戦争は厭(いや)だね、ってストレートな話になぜ進んでいかない?

 てか、橋下さんはそう思ってる? ならばなんで、憲法96条改正に賛成なの? とここまで書いて、ぶっちゃけ3万円じゃ。あたしにとっちゃ大切な生活費だけどさ。だから、叩かれたり嫌われたり、場合によってはすべての仕事を干されたりすることも想定している。大事なのは、大金を積まれても意見を変えないこと。3万と引き換えにしては怖いよ、この仕事。

 今の世の中でせっかく意見のいえる仕事をさせてもらっているのに、自分の立場を貶(けな)されたぐらいでキレんなや。そこじゃねーから。

週刊朝日 2013年7月12日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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