室井佑月「安倍首相よ、女房の声に耳を傾けてみたら?」 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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室井佑月「安倍首相よ、女房の声に耳を傾けてみたら?」

連載「しがみつく女」

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 福島第一原発事故を契機に注目度が高まった、日本のエネルギー問題。いまだ解決の道筋は見えないが、作家の室井佑月氏は安倍晋三首相に言いたいことがあるという。

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 MSN産経ニュースによると、安倍晋三首相の昭恵夫人が6日に都内で講演し、「私は原発反対だ。(首相が)外に行って原発を売り込んでいるのに心が痛む」と語ったんだという。なんだかあたしは、少し安心しちゃったな。安倍首相のまわりにも、ちゃんとこういう意見の人がいるんだと思って。

 今の政府は、インドやトルコなどに日本の原発を売ろうとしている。日本は2年前の東日本大震災で原発事故を起こし、その収束もうやむやなままなのに。使用済み核燃料はどうする? 最終処分場は? てか、放射能はまだ漏れてるじゃん。

 福島の子供はこれまでに12人が甲状腺がんと診断され、さらに疑いのある子供が15人も出た。通常、小児甲状腺がんが見つかるのは100万人に1~2人程度。福島の子供が甲状腺がんになる確率は、通常の85~170倍だとする見方もある。関東の鬼怒川支流で1万3300ベクレルの放射性物質を検出した、というのもニュースでやってた。これについて、国土の20%が汚染されてしまったといっている人もいる。

 海外に原発を売るとき、こういう話はされているんだろうか。それによって大金は手に入るだろうが、将来なにかがあったとき、責任は負えるんだろうか。

 その責任は今、行動を起こした人間が負うものじゃないかもしれない。遠い将来、あたしたちの子供たちが背負わされるものかもしれない。いいんだろうか。

 こういう話をすると、今、金を儲けなければ子供の将来も危うい、という人もいる。けれど昭恵夫人はこうもつづけた。「(原発は)日本の大事な技術だと思う。それは認めるが、原発に使っているお金の一部を新しいエネルギーの開発に使い、日本発のクリーンエネルギーを海外に売り込んだらもっといい」と。

 女性らしい、すばらしい意見だと思った。女は子供を産む性だから、今、そのときで将来を考えない。将来とはあたしたちの子供、そのまた子供のことなのだと考える。昭恵さんは子宝に恵まれなかったが、立派にこの国のお母さんだよ。

 安倍首相、最前線で今を戦っているのはわかるけど、女房の声にも耳を傾けてみたら?

 福島県漁業協同組合連合会と東京電力などの間で、福島第一原発の敷地内の地下水を海に放出するかどうかの話し合いがつづいている。県漁連の組合長会議をネットで観たが、漁師さんたちの集まりだからか、男の人ばかりだった。東電の説明者も男ばかりだし。両者とも家で女房に、「おまえはどう思う?」と聞いてみておくれ。賢明な答えが返ってくる気がする。

 いいや、この話は、東電や県漁連など一部だけでされてること自体がおかしいのであった。海はつづいている。みんなのもの。子供だって知ってるさ。

週刊朝日 2013年6月28日号


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室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。自らの子育てを綴ったエッセー「息子ってヤツは」(毎日新聞出版)が発売中。

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