元ライブドア社長の堀江貴文氏は次に消えゆくメディアについて、台湾で気づかされたという。

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 先日、台湾に行ってきた。主な目的は国立台湾師範大学で行われた「みらいのねいろ」というボーカロイド「初音ミク」のライブイベントを見学することである。最新のリアルバンド演奏に同期して初音ミクのCGが動き、歌うライブはなかなかの臨場感で、ライブハウスなどで盛り上がってテンポが上がっても対応できるという優れもの。

 大学院生の、なヲタ君がCGから同期システムまで作って自らキーボード演奏しながらMIDIフットペダルでテンポを取っている姿はまさに未来の音色そのものであった。MCなどにも対応してもっとレベルアップしていくそうである。

 台湾でも大人気のボーカロイド。面白いのはオープンにいろいろな人々が日々進化に携わっていっていることである。切磋琢磨してレベルアップする様子は新しいクリエイティブの姿に見える。

 さて、そんな先進的なライブ演奏が行われた国、台湾はテリー・ゴウ率いるホンハイ精密工業、中国ではFoxconnとして有名な世界最大の電子機器受託生産(EMS)会社がある国でもある。実は過密スケジュールのなか、飛行機移動中に映画評を頼まれていた試写用DVDを見るためにポータブルのDVDプレーヤーを購入しようと空港構内にある電器屋さんを訪れた。

 すると、流暢な日本語で、「今時そんなDVDプレーヤーなんて置いていませんよ。今はMP4のプレーヤーとかですかね」……なんてこった。大型電器店と違って、空港の小規模店舗には売れ筋商品しか置いていない。少なくとも台湾ではすでに必要とされなくなりつつあるアイテムであるということだ。

 考えてみればAppleのMacBookシリーズからはDVDプレーヤーが相当前からなくなっている。Appleが採用しなかったデバイスは廃れていくというのはこれまでも同じで、古くはフロッピーディスク、CD-ROMにSCSIハードディスクなどなど。同じくDVDやブルーレイというメディアはなくなりつつあるということだろう。確かにブロードバンドインターネットが発達する過程で、動画配信サービスもHD画質のものさえ増えてきている。大画面テレビで問題なく見られるレベルに達しつつあるのだ。もうDVDは用なしということなのだろう。

 これからの世の中、グローバルレベルで物事を見ていかないと損をすることになる。新しい技術を積極的に取り込むことによってベネフィットを得られる時代なのである。いまどきレンタルビデオ屋さんに行ってDVDレンタルをすることがいかに時代遅れかを認識した上で、オンデマンドビデオ配信サービスなどを体験すれば、得られる“なにか”は多いのではないだろうか。

 いままでの生活習慣を変えられない人、おっくうな人はこの文章を読んだのを機会に少しでも新しいことに挑戦してみてはいかがだろう。新しい視点を持てば、普段の生活にも潤いが生まれてくると私は思うのである。

週刊朝日 2013年6月7日号