景気の上向きが期待されているが、リストラや給与カットに遭うことは珍しくない。収入の減少から、教育費すらカットする家庭も増えているようだ。そこで、公的制度では足りない部分を埋める「進学保険」が登場した。それが「授業料等減免費用保険」。学習塾・日能研関東の小嶋隆社長が四谷大塚、損保ジャパン(東京・新宿)とともに、私立学校奨学支援保険サービス(本社・横浜)という会社を立ち上げた。

 国や都道府県による公的な支援制度もあるが、東京都の場合は授業料の減免は5分の4が上限で、しかも授業料以外の費用は対象にならない。それを代わりに支払うのが、この保険だ。

 生徒や保護者ではなく「学校」が加入するというもので、リストラ、会社倒産、長期入院、離婚などの家計の急変で、学校が授業料などの支払いを減免した場合に、公的制度の対象になっていない費用を生徒側に代わって支払う。

 加入校の八雲学園(東京・目黒)を訪ねた。八雲では、中学生は年に千円、高校生は3千円を払う。家計急変が起きた生徒には、授業料以外の全ての費用を保険で賄えるよう、学校全体でセーフティーネットを張った。

 八雲は中高一貫の女子校で、「本命受験」が多く、経済的にギリギリでも入学してくる生徒が少なくない。近年は、他校同様に、保護者が大会社に勤務していても、リストラなどで家計が急変したと相談を受けるケースが増えていた。

 元文部科学官僚の寺脇研二・京都造形芸術大学教授が言う。「実は、教育の現場に“保険”が入ってくることは、長年嫌悪されていた。教育と商売を絡めるなんてけしからんという風潮が残っていたからです。しかし、学資の分野にまで保険商品ができてきたということは、それだけ家計が苦しい家庭が増えているということ。時代に合わせて、現場の意識も変化しなくては」。

週刊朝日 2013年4月12日号