安倍内閣が2月28日、日銀の新しい総裁と副総裁2人の人事案を国会に提示した。総裁には黒田東彦(はるひこ)アジア開発銀行総裁(68)を、副総裁には、岩田規久男・学習院大学教授(70)と、中曽(なかそ)宏・日銀理事(59)を充てる案だ。黒田氏、岩田氏ともに安倍首相の政策に沿って、物価目標(インフレターゲット)2%の達成と、それに向けて金融緩和を強める考えを持っている。

 この体制を金融市場は喜んで迎えた。みずほ総合研究所の高田創チーフエコノミストによれば、欧州の投資家は、黒田氏ら3人について、「ドリームチーム」と話したそうだ。

「世界はいま『金融緩和オリンピック』の状態にあります。オリンピックにはルールがあり、それをわかっている黒田氏は最適です」(高田氏)

 だが、実はここにアベノミクス崩壊の危機が潜んでいる。黒田氏、岩田氏が歯を食いしばって物価目標の達成が近づくほど、金融緩和の「副作用」が表れやすくなるのだ。

 金利の上昇である。とくに、10年満期の国債を物差しとする長期金利が上がると、住宅ローンの金利に影響するだけではなく、ひいては「借金漬け」になっている国の財政が破綻に直面しかねない。

 この1カ月ほど、長期金利は下がった(国債の価格は上がった)。9年8カ月ぶりの低水準だ。日銀が国債をせっせと買い取ってくれる期待があるから、銀行も安心して国債にお金を出せるのだ。だが、皮肉にも国債買い取り政策がうまくいくと、「景気がよくなれば、長期金利はそれ以上に上がるものです。いままでは運がよかった」(第一生命経済研究所の野英生・主席エコノミスト)

週刊朝日 2013年3月15日号