(※イメージ)
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 脚本家の河原雅彦氏は「悪意を感じる人」が好きだという。それを「常にどこか一歩引いたところで物事や人物を余裕で捉えていて、それによりほんのり意地悪さを感じる」と表現しており、具体的な例なども交えて次のように説明している。

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 ま、俺なんかが書くと極端になっちゃうけど、ようは日常に溢れるホントなんでもないことへの、『一歩踏み込んだ想像力&観察力』ってことですな。物事の表面に留まらず、その裏側にまで自然にイメージが働くというか。なにごとも表裏(おもてうら)あわせて一つだという真理をフィーリングで理解しておるわけですよ。

 この手の感性をベースに持っている人は、仕事においても対人関係においても、光るセンスを発揮している人が多いと思う。

 たとえば、とにかくよく気が回るね。「この人はこうこうこういう人だから、こんなふうにされたらイヤなんでしょ?」ってことは絶対にしないし、逆に「アナタはこれをお望みなんでしょ?」ってことには、余裕を持って嫌みのない対応が迅速に出来る。

 あとは、その状況状況での自分の居方を心得ているため、その存在に無理がない。とにかくスマート。俗に言う“空気が読めない”ヤツには決してならないのさ。あと、なにより秀逸なユーモアのセンスにこそ『悪意』は必需品。物真似一つとったって、あれ、完全に悪意でしょ? そういう目線で人を観察し、デフォルメして自分の表現に変えてるわけだから。

 チャップリンだってそう。スクリーンにおいて、その時々の世相から自分の短所まで、すべての悪意をユーモアに変換し続けた大天才。芸人さんだと、有吉や(芸人さんじゃないけど)マツコ・デラックスがなぜあんなに面白いかと言えば、悪意を全面的に芸にしてるからだもん。

週刊朝日 2013年3月1日号