AIJ投資顧問による詐欺事件で、高い運用成績をしゃにむに求める厚生年金基金の苦境が浮き彫りとなった。会社員の老後を支える厚生年金は大丈夫なのか。

「家計の見直し相談センター」の藤川太氏は、2013年4月になると、60歳で退職してしまえば給料がなくなるのに、年金を受け取れない「空白期間」が生じる人が出てくること、給料に対する掛け金の比率(保険料率)も引き上げのまっただ中であることを指摘する。そして、この「危機」への対処法を解説する。

*  *  *

 定年退職から年金受け取りまでに生じる「空白期間」を埋めようと、企業に対して定年の延長、定年そのものをなくす、継続雇用のいずれかの措置を講じることで、65歳までの雇用を確保することが義務付けられました。ただ、これまでは労使協定で基準を定めてあれば希望しても働けない人もいました。しかし13年4月以降は、60歳以降も働きたい人は全員働けることになったのです。もっとも、厚労省は過去、厚生年金の支給開始年齢を68歳まで引き上げる案を示したこともあり、「いたちごっこ」になるかもしれません。元気なうちは生きがいのためにも働き続けられますが、そうなると、今度は健康に対する不安が大きくなるのかもしれませんね。

 では、自分の代わりに資産に働いてもらうのは、どうでしょうか。たとえば、生命保険会社などが販売する金融商品に個人年金保険があります。仕組みは公的年金とほぼ同じ。掛け金を月々または一括で支払い、専門家がそれを運用し、老後に受け取るものです。いわば公的年金に対する私的年金ですね。

 個人年金を活用するには、二つの条件を満たす必要があると考えています。ひとつは、年金を受け取り始めるまでに少なくとも10年間以上の運用期間を確保できること。もともと大きく増える商品ではないので、短期間では、お金がほとんど増えません。

 もうひとつは、13年3月までに運用を始めること。その翌月以降の契約を対象に、生命保険各社が保険料の値上げを予定しているからです。条件によっては1割前後も上がるものもありそうです。

週刊朝日 2013年1月4・11日号