作家の室井佑月氏は、10月に石原慎太郎前東京都知事が緊急会見を開くという話を聞いた際、都知事を退くことを考えホッとしていたという。また「尖閣購入の件を反省したのか」とも思ったというが、実際の会見を見たときには怖さを感じたという。

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 緊急会見の石原さんは、ピンピンしていてやる気に満ちてて、あたしは正直、怖かった。ヤバいものを見ている感じ。

 石原さんいわく、「都民のためにもっと役に立つ仕事をしようとしている」だって。ホントか?

 東京新聞の筆洗というコラムに書いてあった。森喜朗元首相が産経新聞のインタビューで語っていたことが。「昨年四月の都知事選に出馬する意思のなかった石原慎太郎知事を、前自民党幹事長で長男の伸晃氏と二人で説得したという。『ここで降りたら党幹事長でもある伸晃君のためにならない。彼の首相の芽はなくなるよ』」。

 んで、夜中まで説得し、4期目の都知事選に出馬することになったらしい。

 こんなことを手柄のように話す森さんてアホだな、…じゃなかった。つまり、彼を現役でいるように引き止めたのは、息子の存在だ。

 だとしたら今回の、知事を辞め新党作って国政へというのだって、そういう気持ちの延長なんじゃないのか。

 自民党の長老たちが息子を総裁にしてくれるっていってたのに、話が違うだろ。舐めてんのか、えっ! この俺を誰だと思ってる? 嫌がらせしたろか。もう一度、息子の処遇について、話し合おうじゃないの。

 あたしにはそういうことのような気がしてならない。しかし、そういっているマスコミはない。

週刊朝日 2012年11月16日号

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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