横浜市内に住む母親は、今年9月、中学1年の娘が学校から持ち帰ったプリントを見て驚いた。

「10月にもらう予定の前期分の通知表のコピーで、成績のほかに出席や早退の日数もついていました。『記載ミスを防ぐため、確認の上、署名して返却してほしい』と書いてあるんです」

 やや腑に落ちない成績もあったが、指摘するほどではなく、署名して娘に持たせた。そして前期末の10月5日、娘は内容のわかっている通知表を受け取った。

「間違いはないほうがいいですけど、それって学校の仕事ですよね…」と、母親は言う。

 横浜市教育委員会は今年7月、通知表の「事前確認」を促す文書を、小中学校など市立全506校の校長に送った。通知表は教師がつけ、保護者は受け取るもの。常識だ。なのになぜ「事前確認」が行われたのか。背景にあったのは、通知表の相次ぐ「記載ミス」だ。市教委によれば、

▼119校、1371人(2011年度1学期末と前期末。市立小中高)
▼88校、1281人(同年度3学期末と後期末。市立小中)

 と、昨年度の1年間で2600人分を超える記載ミスが見つかった。ミスの内容は、出席日数や欠席理由、さらに家庭科の欄に体育の成績を入れるといった間違いも。パソコンの入力や計算式のミスで評定が低くなるというケアレスミスもあったという。それが保護者の不信感を生んだのだ。

「中高の入試を控えた子どもや親にとっては、一つのミスも大問題。特に神奈川県の公立高入試は内申点を重視する傾向がありますから。実際、学校や教委にクレームを入れた人もいます」(中学生の保護者)

 ただし、通知には「事前確認」の具体的な方法は示されていない。そのため、コピーを全部渡す、一部だけ渡す、口頭で伝える、など学校によって対応が分かれた。中には、事前確認することなく従来どおり通知表を渡した学校もあった。コピーを渡した学校では、「成績が低すぎる」など保護者から40件以上の苦情を受けたところもあったという。

週刊朝日 2012年11月16日号