他人になりすまして脅迫メールを送った事件では、警察までもがコロッとだまされた。だが、ネット上で他人の名前を騙(かた)るのは、実はとても簡単だ。実際に探してみると、そうしたサイトはすぐに見つかる。サイトには、「当サイトはパロディーサイトです。エンタメとしてご利用下さい」との注意書きがあるが、実際には、「なりすましや迷惑メールを送るために悪用されている」(業界関係者)という。

 なりすましメールで、深刻な被害を受けた人もいる。都内の製薬会社で働く20代の女性会社員Bさんもその一人だ。

「ある日、いきなり彼氏から別れを告げるメールが届いたんです。大学生のころから6年間、順調に交際を続けていて、お互いに結婚を意識し始めていたころだったので、本当に驚いたし、悲しかった」

 すぐに彼氏に電話をして、本人からのメールではないと確認できたものの、以来、Bさんはメールを信じられなくなってしまったという。

「メールでデートの約束をしても、不安に感じて確認の電話をしてしまうんです。彼氏に限らずメールを交わす回数が減ったし、大事な話は電話でやり取りしなければ、安心できなくなりました」

 ネット上の風評被害やトラブルの対策を行う「エーディーシー」の疋田忠明代表によれば、なりすましメールはここ数年、増える一方だ。なりすましは、送信元の表示や送信経路を確認することで見抜ける場合もあるが、疋田代表は、

「おかしいと思ったら、Bさんのように電話をしたり、直接会ったりして本人に確認するのが一番です」

 という。

週刊朝日 2012年11月9日号