ライターの朝山実氏は父を亡くし、遺産相続をめぐって身内で揉めた体験をもつ。そのため、父から受け継いだ自分の財産が将来どうなるのか、気になるようになったという。そこで「ちょっと早めに」遺言状をつくってみることにしたといい、その様子を次のようにつづっている。

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 私はバツイチで、子供ナシ。「おひとりさま」だ。ならば、私が死んだ後の遺産相続はどうなるのか。

 おひとりさまの場合、存命ならまず両親が相続人となるが、父に先立ち、20年前に母も他界しているので、きょうだいに渡ることとなる。

 それは嫌だ! 父の遺産相続で揉めてから「この兄には渡したくない」、なんとか阻止したいと思うようになった。

「簡単ですよ。『○○さんにぜんぶ遺贈する』と遺言を書けばいいんです」

 アドバイスをもらったのは、税理士の福田真弓さん。『必ずもめる相続の話』(東洋経済新報社)の著者だ。「遺言があれば、きょうだいには遺留分がありませんから、お兄さんにはいきません」。

 一円も? 「はい」と福田さんは微笑んだ。

 遺留分とは、特定の相続人に保障されている最低限の取り分。遺言があっても、配偶者や子や孫、父母、祖父母などであれば請求できる。ただし、遺留分の侵害を受けたと知ってから1年以内と決められ、きょうだいについては遺留分は認められていない。

 福田さんからアドバイスされた「自筆証書遺言」は、「○○に私の財産のすべてを遺贈する」といった一文に署名・捺印するだけのシンプルなものだった。捺印は認め印でもOKとのこと。

「きょうだいの確執がよくあらわれていますね」と言われたのは、「廃除」という文言をさしてのこと。文例集の、相続人と被相続人の問にトラブルがある例に倣って、私は兄の名前をあげ「相続人から廃除する」と書いていた。

「すでに『記載漏れがあった財産については○○さんに遺贈します』と書かれてあるのでお兄さんにはいきません。『廃除』とあえて書く必要はないと思いますよ」

※週刊朝日 2012年9月14日号