8月19日の香港の活動家らによる上陸に続き、今度は日本人が尖閣諸島に立った。彼らは、保守系の政治団体「頑張れ日本!全国行動委員会」(田母神俊雄会長)が主催するツアーに同行していた人々。ツアーの趣旨は、尖閣諸島周辺で漁業活動をすることで、日本の領土としての実効支配を確実なものにする、ということだったが、今回は、戦争末期に尖閣諸島沖で遭難した疎開船の慰霊を洋上で行うことも目的に含まれていた。ツアーに同行していたノンフィクションライター・西牟田靖氏が上陸した人たちに話を聞いた。

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 あのとき、何があったのか。ツアーの主催者である水島総氏はこう語る。

「私だけでも上陸して慰霊すべきだろうと思い、洋上慰霊祭終了後、着の身着のまま飛び込みました。地方議員の皆様も以心伝心で意図を理解し上陸していただきました。『軽犯罪法に触れる可能性がある』という放送が1、2回ありました。上陸は約1時間半。慰霊祭で般若心経を唱え、他の皆さんにも手を合わせていただきました」

 実は、テレビ映像などで目立った彼ら以外にも、こんな"強者"がいた。

「朝4時に静かに入水し、見つからないように最初の50メートルは水深5メートルを潜行、300~400メートルは水面をフィンで移動した。上陸して灯台に国旗をくっつけ、島の尾根目指して登った。海保のジェット機、県警ヘリ、海自のP3も飛んできたので、探知されないよう隠れた。標高約300メートル地点の尾根に国旗を二つぶら下げたのが8時前でした」(元海自特殊部隊の伊藤祐靖氏)

※週刊朝日 2012年9月7日号