良性の婦人科疾患の中で、子宮筋腫や子宮内膜症と並んで多いのが、卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)だ。自覚症状が少なく、卵巣がねじれを起こし、激痛で救急搬送されることも少なくない。

 東京都に住む高校生の田中結衣さん(仮名・17歳)は、今年5月、おなかが急激に痛くなり、近所の内科を受診した。便秘と診断され、下剤を服用していたが、3日たっても痛みは治まらない。「こんなに痛がるのはおかしい」と感じた父親が、ほかの病院をインターネットなどで調べ、順天堂大学順天堂医院の産科・婦人科で診てもらうことにした。そこで診察や超音波検査を受けたところ、通常は親指の大きさ程度の卵巣が、左側だけ10センチ近くまで腫れ上がっていて、卵巣嚢腫の一つである皮様(ひよう)嚢腫と診断された。痛みは、卵巣が大きく腫れたことで、付け根の茎の部分がねじれたこと(茎捻転・けいねんてん)によるものだった。

 田中さんを診た同院産科・婦人科先任准教授の菊地盤(いわほ)医師は、こう話す。

「茎捻転を放置すると、血管がねじれて血流が途絶え、卵巣が壊死(えし)してしまうことがあります。こうなると、卵巣ごと摘出せざるを得ないので、下腹部に激痛があるときは、婦人科を受診することをすすめます。緊急手術が必要になることもあります」

 田中さんの場合、捻転の程度が軽かったため、痛みが起きてから3日たっても卵巣は機能していたが、一般的には2日以上たつと、壊死する可能性が高い。

※週刊朝日 2012年7月20日号