小沢一郎を党首とする「小沢新党」が、7月11日に結成される。

 小沢氏は、選挙に強く、政局の権謀術数にたけているという「神話」を築いた。過去、自民党政権を2度ぶち壊し、政権交代も実現した。しかし、新党の船出は苦しいとジャーナリストの田原総一朗氏はみている。

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 小沢は、現在もっとも話題の中心になっている政治家だ。ただし、国民の受けは、はなはだよろしくない。朝日新聞が6月26、27日に行った世論調査では、無党派層で「小沢新党に期待する」と答えた人はわずか15%、「期待しない」が76%だった。

「消費増税関連法案」の採決をめぐり、小沢に「三つの誤算」が起きた。

 自民党は、想像以上にだらしなく、何も起きなかった。これが一つ目だ。

 二つ目は、民主党の輿石東幹事長が「消費増税法案に反対や棄権しても、党内融和のため処分しない」と半ば明言していたのに、これが守られず、小沢グループは離党せざるをえなくなった。

 そして三つ目。小沢は新党運営のための資金を民主党から得るため、「協議離婚」、つまり分党を認めよと輿石に迫った。分党ならば、新党には約15億円の政党助成金が入る。小沢が輿石と面談を重ねていたのは、実はカネの交渉だった。輿石は、当初は小沢に甘い顔をしていたが、結局一銭も出さなかった。

 三つの誤算が重なって、「小沢新党」は苦しい船出となった。悲観論が渦巻く中、小沢一郎はどんな手腕を発揮するのか。見守りたい。

※週刊朝日 2012年7月20日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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