経済産業省がこの夏に始める「自然エネルギー固定価格買い取り制度」。ニュースキャスターの辛坊治郎氏は、自宅で8年間太陽光発電を行ってきた経験を踏まえ、適正な買い取り価格についてこう結論付ける。

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 最近のホームセンターのチラシの中には、太陽光発電の設置費が明示されているものがある。これを見ると、1キロワットあたり30万円ほどの「激安」商品もあるが、一般的な家庭用機器の設置コストは、新築住宅で40万円、既存住宅で60万円程度だ。これでどのくらいの発電量が見込めるか? 我が家での8年間の実績では、1キロワットパネル1枚が年間に発電する総電力量は約900キロワット時だ。今回、経産省の委員会が提示した42円の買い取り価格なら、年間の収入は3万7800円となり、40万円の設置費は10年ほどで回収できることになる。また、初期コスト40万円に対して毎年3万7800円の収入なら、利回りは約9.5%だ。なるほど、自然エネルギー事業への異業種からの参入話が、次々新聞に載る理由がよく分かる。

 それでは太陽光の電力買い取り価格はいくらくらいが適正なのだろうか? 私は、投資額に対して、5%くらいの利回りが標準とされるべきではないかと思う。これを既存住宅における設置費60万円で計算すると、電力買い取り価格は33円程度になる。また小型風力発電のように基幹エネルギー源としての未来が見えないものについて、異常な高値で買い取ることはやめるべきだろう。さらにいうなら、一般消費者の電気代に自然エネルギーの発電コストを上乗せするという制度自体、考え直すべきではないかと思う。

※週刊朝日 2012年6月15日号