大飯原発の再稼働問題に絡んで、大阪市の橋下徹市長の失脚を期待する声が永田町から聞こえている、とニュースキャスターの辛坊治郎氏は話す。

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 昨今、永田町から不穏な声が聞こえてくる。それは、ある問題に絡んで、大阪市の橋下徹市長の失脚を期待する声だ。

 経産省が再稼働第1号として白羽の失を立てたのが福井県の関西電力大飯原発3号機と4号機だった。

 福島の事故後最初に動かす原発は、福島とは違う加圧水型の方が理解を得やすい。

 なかでも大飯の3、4号磯は、他の周辺の原発に比べると比較的新しい。また、3・11以前に過半の電力を原発に頼っていた関西は、電力需給の逼迫度合いが高く、一方、大飯原発のある福井県には全国最多の13基の原発が立地しており、原発抜きの経済が考えられない土地柄だ。それゆえ政府は、電力消費地としての地元関西と原発が立地する福井県、両者の「願い」に基づき、まず大飯原発を再稼働させる道筋を考えたのだ。

 ところが、ここで計算違いが起きる。電力不足から原発再稼働を願い出るはずだった関西最大の電力消費自治体の市長が「原発再稼働絶対反対」を掲げてしまったのだ。橋下徹大阪市長は「絶対に(再稼働を)許してはいけない。民主党政権を倒すしかない」と発言し、これに民主党の輿石東幹事長が「受けて立つ」と返して、今や両者は全面戦争状態だ。そして、冒頭の不穏な声に至る。

※週刊朝日 2012年6月1日号