宇宙最大の謎、「暗黒物質」と「暗黒エネルギー」。その解明に、ハワイにある日本のすばる望遠鏡が挑戦している。中でも暗黒エネルギーに関しては、いま大胆な仮説が提唱されているという。

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 宇宙をどこまでも引き裂こうとするのが暗黒エネルギー。こちらは暗黒物質よりも多い、宇宙の73%を占めていながら、物質ですらない。
 この暗黒エネルギーについて、大胆な仮説が提唱されている。
「まだニュートンの万有引力の法則しか知られていなかった19世紀のことです。水星の動きが万有引力の法則では説明できないことが分かり、『未知の惑星があるのでは』と多くの人が探しました。なかにはその星『ヴァルカン』を見つけたという人もいたそうです。しかし、アインシュタインの相対論によって水星の動きは説明できた。『ヴァルカン』なんてなかった。未知の惑星を暗黒エネルギーに置き換えると、現在の状況に似ていませんか」
 こんなことを話すのは、東京大学カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)特任准教授の向山(むこうやま)信治さん(40)だ。向山さんは暗黒物質も暗黒エネルギーも相対論を前提にするからあると思えるだけで、実体は全く別のものではないかと考えている。
「もし宇宙が10次元からできていて、私たちの知らない六つの余剰次元があったとします。私たちの宇宙は、余剰次元に浮かぶ膜(Dブレーン)のようなものです。この余剰次元内にブラックホールのような強力な重力源が生まれ、私たちの膜宇宙とは別の場所に落ち着くと、その影響で私たちの宇宙では暗黒エネルギーが生まれたり、暗黒物質が見えたりすることが考えられるのです」
 余剰次元に膜宇宙。もはやSFだ。しかし、現代物理学は今、これを真剣に議論している。

※週刊朝日 2012年5月18日号