国内の不況などどこ吹く風。4期連続営業最高益を更新する楽天が「電子書籍市場」への参入を表明した。さきの決算発表では、冒頭で触れるほどの力の入れようだ。社内で自ら陣頭指揮をふるう三木谷浩史社長に、「狙い」「願望」を聞いた。

――参入理由は何ですか。

 出版界が縮小してきているなか、電子書籍は出版業界が復活する大きな起爆剤になると思っている。日本のコンテンツを海外に輸出することで、出版界に貢献できる。電子書籍端末の登場は「革命」だと思います。インターネットに次ぐ革命で別の意義もある。インターネットは流れていく情報だが、電子書籍は蓄積した情報を読むものですから。

 楽天は昨年11月、世界100カ国で電子書籍事業を展開するカナダのKobo(コボ)社を約236億円で買収すると発表した(買収完了は今年1月)。その狙いは、Kobo社の電子書籍端末「Kobo」を日本市場に投入することだ。楽天の最大のライバル・米アマゾンも電子書籍端末「キンドル」を日本国内で販売する方針だ。

――ライバルのアマゾンも電子書籍端末を日本で発売する予定です。

 我々は日本の会社。出版業界と共存共栄でやっていきたい。出版業界の売り上げが増え、楽天も大きくなり、読者も喜ぶ。そういう関係になりたい。競合他社は「価格は我々が決める」というスタンスのようだが、楽天は安売りするようなことはしたくない。我々は編集という出版の仕組みを壊すことはしない。出版は文化。そこは大切にしていきたい。

――電子書籍端末をどう普及させる考えですか?

 正攻法でいきます。買いやすい手頃な価格で出しますよ。Koboは無線LAN方式のため、既にWi-Fi契約を結んでいる人は追加の費用や通信費用はかからない。メディアや出版社、リアルな店舗とともに、楽天ポイントの付与などあらゆる手段で、楽天会員を中心に展開を探る。いやあ、いいですよ、Koboは。タブレットとは違って、軽い。反射しても見ることができる。電池も長持ちする。来年以降にはカラー版の端末も出ます。そうなると週刊誌もコンテンツになりますね。

――キラーコンテンツは何だと思いますか。

 書籍の分野でいえば、年齢性別によって好みは違うが、ジャンルは多岐にわたっている。古い書籍を入れて300万冊ある。マンガは世界中に配信したい。大きなビジネスになりますよ。Koboは多言語対応ができ、言語フォントも変えられる。翻訳などコンテンツの規格変換について楽天で請け負う用意がある。

――市場規模は大きくなりますか。

 日本の書籍市場はいま約9千億円。早ければ5年で半分の4500億円は電子書籍になると考えている。

週刊朝日2012年4月27日号