長らく低迷してきた日本株も本格復活の気配を漂わせ始めた。3月14日の東京株式市場で、日経平均株価は約7ヵ月半ぶりに終値で1万円台を回復した。年初からすでに1500円近くも上げ、そのピッチは速くなっている。昨年は東日本大震災や欧州危機、タイの大洪水などで、多くの日本企業が打撃を受けたが、ここにきて、相場観を"上方修正"するアナリストが目立ち始めた。

 それもそのはずである。日米欧が同時に「金融緩和」という景気刺激策を実施。世の中にお金が出回るように、ジャブジャブと流しているからだ。その一部が日本株に向かっている。

 いちよし証券シニアアナリストの鈴木東陽氏は、「景気の流れが変わった」と解説する。

 欧州では昨年12月と今年2月に金融緩和を発表。1月には米国でゼロ金利延長が表明され、2月には日本銀行が追加緩和に加え、初めて物価上昇率1%の緩やかなインフレ目標を設定するという"サプライズ"に踏み切った。

「多くの企業が円高進行を前提に今年度の業績を悲観的に見通していましたが、金融緩和に加えて円安に動いたこともあって、1~3月期の業績が"予想外"に回復しました。今年度の決算は、企業が公表した予想値を上回ると予想され、さらに来年度の大幅増益への期待感が高まるのではないでしょうか」(鈴木氏)

 日銀のデフレ脱却への"本気度"を評価する声もある。三菱UFJ投信株式運用部チーフファンドマネジャーの小西一陽氏が語る。

「日銀が実質的に物価上昇率をターゲットにしたのは、今までより一歩踏み込んだ施策。投資家にとっては、日銀が変わってきていると評価できる」

 カブドットコム証券マーケットアナリストの山田勉氏も、こう言う。

「今までのデフレ施策が誤りだったということ。政府が円高を容認して歳出を控え、日銀の量的金融緩和も中途半端だったために、株価低迷が続いてきたのです。それが2月の日銀の"サプライズ"により、『ようやく日銀が本気になった』と、投資家が前向きになった」

※週刊朝日 2012年3月30日号

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